反同性愛法で「見せしめ」に
ウガンダ(上)
オバマ米政権が大国のパワーを振りかざし、途上国に同性愛を肯定する文化・価値観を押し付けるのは、まるで「弱い者いじめ」だ。オバマ政権が強化する国際的圧力の中で、最大の標的となったのがアフリカ東部のウガンダだ。
2014年の国勢調査によると、ウガンダの人口は約3500万人で、このうちキリスト教徒が85%を占める。米調査機関ピュー・リサーチ・センターが13年に行った世論調査では、93%が同性愛を道徳的に許容できないと回答した。
そんなウガンダが“いじめ”の標的となったのは、09年に議会で同性愛禁止を強化する法案が提出されてからだ。ウガンダにはもともと、イギリス植民地の名残で同性愛行為を犯罪とする、いわゆるソドミー法があった。法案は18歳以下の若者らに対する「悪質な同性愛行為」を厳しく処罰するとともに、個人や団体が同性愛を助長することなどを禁ずる内容だった。
ウガンダでは当時、海外組織から資金提供を受けた同性愛者が子供たちを同性愛に“リクルート”していたとの証言があり、社会に大きな衝撃を与えていた。このため、法案は子供たちを同性愛から守ることに主眼が置かれた。
だが、当初の法案では「悪質な同性愛行為」は最高で死刑が適用されることになっていたため、欧米メディアは「キル・ザ・ゲイズ(同性愛者殺害)法案」と呼び、まるで同性愛者が全員死刑になるかのような印象を与えた。これにより、欧米諸国から激しい反発が巻き起こり、結局、最高刑が死刑から終身刑に修正された法案が14年2月に成立した。
法案に署名したヨウェリ・ムセベニ大統領は、異質の価値観を押し付ける欧米諸国を「社会的帝国主義」と非難。「この議論はウガンダの学校にやって来て子供たちを同性愛にリクルートする西側グループによって引き起こされたものだ。問題を悪化させるより制限した方がいい」と述べ、あくまで子供たちを守るための措置であると強調した。
だが、オバマ政権はウガンダに対し、さまざまな制裁措置を発動。宗教系組織に拠出する予定だったエイズ対策費がキャンセルされたことで、エイズ医療などに従事する職員80人以上が解雇される事態が起きた。また、ウガンダで実施される予定だった米軍と東アフリカ諸国の共同軍事演習が中止されるなど、制裁対象は軍事分野にも及んだ。ウガンダは地域安全保障の重要な同盟国であるにもかかわらずだ。
欧州諸国や世界銀行も経済援助や融資を凍結するなどの制裁を科した。
こうした状況の中、ウガンダの憲法裁判所は同年8月、法案採決に不備があったと判断し、法律は結局、無効になる。
オバマ政権はウガンダに科した制裁措置を「他の国々が同様の法律を成立するのを抑止する」ためだと明言した。オバマ政権の意向に背き、同性愛者の権利擁護の流れに逆らったらどうなるか、ウガンダはその見せしめになったわけだ。
(ワシントン・早川俊行)











