南米チリ 左派ボリッチ氏が大統領就任


反政府デモで頭角

11日、サンティアゴで就任演説に臨むチリのボリッチ新大統領(右)(EPA時事)

 南米チリ中部バルパライソで11日、新大統領の就任式が行われ、左派のガブリエル・ボリッチ氏(36)が第38代大統領に就任した。任期は4年で再選はない。

 ボリッチ氏は首都サンティアゴの大統領府で、国民に向けた演説で格差是正や、環境保護などの重要性を訴えた。

 チリ史上最年少の国家元首となったボリッチ氏は、学生運動の出身。格差是正などを訴えた反政府デモ(2019年)でリーダーとして頭角を表し、政界入りした。激戦となった昨年の大統領選挙では、「南米の第2のトランプ」と呼ばれた右派のカスト候補を決選投票で破り当選した。

 

 南米では、20年11月のボリビア大統領選挙に始まり、ペルー、ニカラグアなど左派政権の誕生が相次いでいる。ただし、ボリッチ氏は、ベネズエラやニカラグア、キューバなどのように強権的な社会主義を批判、欧州左派が導入する社会民主主義に近い政治思想の持ち主だと言われている。

 チリでは、ピノチェト軍事政権(1973~90年)以後、穏健左派と穏健右派が交代で政権を担当してきた。資源輸出を背景に、安定した政治・経済の中で「南米の優等生」とも言われてきた同国だが、ボリッチ氏の就任を境にチリ社会が大きく変わる可能性がある。

(サンパウロ・綾村悟)