イスラエル、エジプト、UAEが異例の首脳会談


イラン革命防衛隊(IRGC)のテロ指定解除に懸念
サウジ、米政権に失望

 イスラエル、エジプト、アラブ首長国連邦(UAE)の3首脳による異例ともいえる会談が22日、エジプト東部の紅海沿岸の保養地シャルムエルシェイクで初めて行われた。イスラエルとUAEは、バイデン米政権がイラン革命防衛隊(IRGC)のテロ組織指定を解除する可能性について懸念を表明している。
(エルサレム・森田貴裕)

エジプト東部シャルムエルシェイクで22日、会談に臨むイスラエルのベネット首相(右)とエジプトのシシ大統領(中央)、アラブ首長国連邦(UAE)のムハンマド皇太子(イスラエル政府報道局提供)

 当初、秘密裏にエジプトを訪れたイスラエルのベネット首相は22日、シャルムエルシェイクでエジプトのシシ大統領、UAEで国政の実権を握るアブダビ首長国のムハンマド皇太子と3者会談を行い、イランの核開発問題やその代理武装勢力など、イランの脅威に対応するための共同の安全保障戦略について話し合った。

 一方、この3首脳の会談に先立ち、シリアのアサド大統領が18日に、UAEを訪問し、ムハンマド皇太子らと会談した。

 シリア内戦が始まった2011年以降、アサド氏が他のアラブ諸国を訪れたのは初めて。ムハンマド皇太子は会談で、「今回のアサド大統領の訪問は、シリアと中東地域全体の平和と安定の始まりとなるだろう」と述べた。この会談での詳細も、シャルムエルシェイクでの3首脳会談で報告されたようだ。

 ウィーンで昨年11月に再開された15年のイラン核合意再建に向けたイランと米国の間接協議が最終段階を迎えているが、イランのライシ政権は、バイデン米政権に対し、IRGCのテロ組織指定を解除するよう要求している。マレー・イラン担当特使率いる米代表団は、この要求をのめば、イランの核兵器保有の可能性を排除するための保証を得られるとした。

 イスラエルのベネット首相とラピド外相は18日、共同声明で「米国に危害を及ぼさないという条件でIRGCのテロ組織指定が解除されるとは信じ難い」「われわれは、米政権がテロリストの空約束と引き換えに、最も近い同盟国を見放すことはないと信じている」と述べた。

 UAEアブダビ首長国の当局者は、「イスラエルと同様、IRGCのテロ組織指定が解除される可能性があることに非常にショックを受けている」と述べた。

 米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによると、ムハンマド皇太子とサウジアラビアのムハンマド皇太子は、湾岸地域でのバイデン米政権の政策に失望したため、対ロシア制裁に起因するエネルギー問題についての米側からの対話要請を拒否しているという。同様の理由で、UAEとサウジは先月、米国によって国連安全保障理事会に提出されたロシアのウクライナ侵攻を非難する決議案には賛成票を投じていない。

 サウジとUAEは、イラン核合意再建協議が両国の安全保障に対応していないことを懸念している。バイデン米政権は昨年、イランへの歩み寄りを示す狙いもあり、イランが支援するイエメンの反政府武装組織フーシ派のテロ組織指定を解除した。イエメン内戦に軍事介入しているサウジやUAEは、ここ数カ月、フーシ派による弾道ミサイルやドローン(無人機)を使った攻撃の標的にされている。UAEの首都アブダビが1月にフーシ派の攻撃を受けた後、バイデン米政権はフーシ派を再びテロ組織に指定するかを検討していることを明らかにした。再び指定されれば、米国とイランとの関係は悪化の方向に向かう可能性が高くなる。

 イスラエルは、イラン核合意に激しく反対している。しかし、エジプトとUAEの両国は、イランが中東全域で代理武装勢力を支援していることに懸念を示しているものの、核合意再建については、合意がなされない限りイランは確実に核開発を進めることができるとしている。

 イスラエルを訪問したブリンケン米国務長官は27日、「核合意再建がイランの核開発を抑止する最良の方法だ」と述べた。イラン核合意は、対イラン制裁の段階的な解除と引き換えにイランの核開発に制限を課しており、その制限のほとんどは25年末で失効する。