「アジア版NATO」創設を エスパー前米国防長官・基調講演


第4回シンクタンク2022フォーラム 世界日報など主催

国連NGOのUPFと世界日報、米紙ワシントン・タイムズ、韓国紙セゲイルボが主催する「第4回シンクタンク2022フォーラム」が先月、韓国・京畿道加平郡のイベントホールで開催された。同フォーラムは朝鮮半島の統一や恒久的な世界平和に向けたビジョンを討議する国際会議で、マーク・エスパー前米国防長官が基調講演した。エスパー氏は、中国や北朝鮮の脅威に対抗するため、「アジア版NATO」を創設する必要性を訴えた。エスパー氏の講演要旨は以下の通り。

共産主義の脅威再び

マーク・エスパー前米国防長官

 私の最も好きな米国大統領であるロナルド・レーガン氏は、米国を多くの人々に希望とインスピレーションを与える「光輝く丘の上の町」と見なした。私が1982年にウエストポイント(陸軍士官学校)に入学したのも、彼が大きな理由だった。

 レーガン氏の最も印象的な功績は、一度も戦うことなく、最大の敵を打ち負かしたことだ。共産主義の哲学と影響力を世界に広げようとするソ連の指導者たちを、強さと明快さ、そして決意を持って打ち負かした。

 残念ながら、悪いイデオロギーはなかなか死なない。ワルシャワ条約機構の終了から30年余りたった今、われわれはこの腐敗した哲学による新たな挑戦に直面している。

 20世紀におけるソ連の衰退は、21世紀における中国の台頭と入れ替わった。中国はソ連と同様、世界を支配しようとしている。まず、中国西部、チベット、香港、次に台湾と、近隣地域を完全に支配することから始め、その重い手はやがてもっと遠くまで届き、多くのものを奪っていくだろう。

 だから、新しい世代の指導者たちは今、レーガン氏の例に倣わなければならない。米国は再び価値観をもってリードしなければならない。

◇韓国もクアッドに

 東アジアで成功するためには、以下の基本的ステップを踏む必要がある。まず第一に、中国、ロシア、北朝鮮に対する最大の優位性を活用する、すなわち同盟とパートナーシップの力を結集することだ。これこそがわれわれの非対称的優位性であり、中国、ロシア、北朝鮮には太刀打ちできないものだ。

 米国は豪州、フィリピン、日本、韓国など、インド太平洋地域全体で偉大な2国間同盟を結んでいる。しかし、本当に必要なのは、これらの同盟国、特に韓国と日本のより良い協力と連携である。われわれは一つのチームとして協力する必要がある。

 米国は「アジア版NATO」の設立を目指していないと言われているが、私は「なぜ?」と言いたい。われわれは高い目標と期待を持つべきであり、歴史や距離に惑わされてはならない。米国の欧州同盟国は、残酷な歴史を乗り超え、ソビエト・ロシアに対処するために集団安全保障体制を築いた。非協力的な北朝鮮と攻撃的な共産主義中国との対決が一段と激化する中、同じことがインド太平洋地域でもできないはずがない。

 だからこそ、私は米国、インド、日本、豪州による「クアッド」と呼ばれる戦略対話を強く支持している。クアッドが軍事的、経済的に台頭する中国への統一的な対応策として注目されるのは当然であり、私は国防長官時代にこれを前進させた。

 第二に、クアッドの深化と強化を継続する一方で、拡大することも必要だ。そのために、韓国が次のパートナーとして加わり、クアッドから「クイント」に移行すべきだ。これは韓国政府が今年、目指すべきことである。

 第三に、米国の同盟国とパートナーは、国内総生産(GDP)の2%以上を防衛に費やすことだ。韓国と豪州は、すでにこの2%の目標を達成している。日本は1%の歴史的水準を超え始めているが、もっと早く進める必要がある。

◇北の非核化目指せ

 北朝鮮は自国民を抑圧する残忍な政権だ。その悪行は国境をはるかに超えて広がっている。日本をはじめ他国の国民を拉致し、海外で自国民を殺害し、サイバー窃盗などの不正行為を大規模に行い、通常兵器と大量破壊兵器を拡散し、さまざまな国際ルールと規範を破っている。北朝鮮は核兵器と弾道ミサイルを持つ、恐るべき軍備を構築している。

 私が仕えた政権は、北の核・ミサイル開発を終わらせ、悪行をすべて抑制することはできなかったが、長距離ミサイルと核兵器の実験を停止させることはできた。これは希望をもたらす突破口となった。

 北朝鮮との作業計画を再活性化させるには、北朝鮮の完全かつ検証可能で不可逆的な非核化から着手しなければならない。これと共に、韓国、日本などに届く弾道ミサイルを除去する必要がある。有意義な交渉に影を落とす全面戦争と威嚇の恐怖を取り除くには、これが不可欠だ。

 この措置は、適切な経済的および制裁緩和などその他のインセンティブを伴うべきであり、非核化が達成されれば、北朝鮮には明確かつ有意義な利益がもたらされる。

マーク・エスパー 1986年に米陸軍士官学校を卒業後、空挺師団の兵士として湾岸戦争に従軍。退役後は上院議員時代のヘーゲル元国防長官の政策顧問などを務めた。トランプ前政権では陸軍長官、国防長官を歴任。ポンペオ前国務長官は陸軍士官学校の同期。