比保健省「オミクロン株を克服」 外国人観光客受け入れ再開

10日間で2万人以上が入国

年明けにオミクロン株による感染急増に見舞われたフィリピンだが、1カ月ほどで感染は収束し、政府は大幅な規制緩和に舵(かじ)を切った。観光ビザによる外国人の入国が本格的に再開されるなど、経済復興に期待が高まっている。政府はさらなる規制緩和で「ニューノーマル」に移行する姿勢も見せている。
(マニラ・福島純一)

フィリピンの観光地ポラカイ島の海岸を歩く人々ー2020年6月(EPA時事)

 フィリピンでは1月中旬に、1日の感染者数が3万人を超える日が続き、ワクチン未接種者の公共交通機関の利用や商業施設への入場を禁止するなど、国民は厳しい感染対策の実施を強いられた。しかし2月に入ると収束に転じ23日の段階で1日1500人程度まで減少している。

 このような状況を踏まえ政府は、念願ともいえる外国人の入国を10日から再開した。対象となるのはビザなし入国が認められている日本を含む約150カ国で、ワクチン接種の完了やPCR検査による陰性証明などが入国条件となっている。入国時の隔離は不要で7日間の自己監視のみ。外国人観光客の受け入れに関しては、昨年12月に予定されていたが感染者増加によって直前で撤回された経緯がある。

 観光省によると外国人観光客の受け入れ開始から10日間で約2万2000人がフィリピンを訪れるなど、順調な滑り出しとなっている。国内の有名リゾート地のボラカイ島やプエルトガレラなどが訪問の際のPCR検査の撤廃を決定するなど、国内の観光産業は約2年ぶりとなる外国人観光客の受け入れに積極的な動きを見せている。同省によると観光業界に従事する労働者の93%に当たる約33万人がすでにワクチン接種を完了しているという。

 保健省によると国内で新型コロナウイルスのワクチン接種の対象となっている7700万人のうち、約70%に相当する6230万人が2回の接種を終えている。特にマニラ首都圏では接種率が100%に達している自治体もあるなど、ワクチンの普及はかなり高くなっており、オミクロン株の流行時に病床の逼迫(ひっぱく)が深刻化しなかった一因と考えられている。

 政府は今後、ブースター接種や未成年者に対する集団接種を加速させ、感染対策をより強固にすることで経済復興に集中する方針を示している。

 また保健省はオミクロン株をすでに「克服」したと指摘し、新型コロナウイルスに対する警戒指標をアラートレベル1(ニューノーマル)にまで引き下げることを検討していることを明らかにした。またマニラ首都圏を構成する17の自治体の首長たちが会合を行い、3月からのアラートレベル1への引き下げを政府に推奨することで合意している。

 独立研究組織のOCTAリサーチの専門家は、マニラ首都圏の陽性率が4・9%と世界保健機関(WHO)が推奨する5%未満を下回り、さらに集中治療室の占有率も25%まで低下していることから、アラートレベル1に引き下げることは可能だと分析した。

 アラートレベル1では、現在ショッピングモールや飲食店などに課せられている入場制限や、年齢や基礎疾患などによる移動制限が撤廃され、マスクの着用やソーシャルディスタンスなど基本的な衛生対策のみとなり、ほぼコロナ禍前の生活に戻ることになる。

 フィリピンでは5月に国政選挙を控え、すでに選挙キャンペーンが活発化しており、各地で大規模な集会なども行われている。しかし今のところ集団感染などは報告されていないことから、今後も規制緩和が本格的に進められる可能性が高い。