高級魚ハタも雑魚扱い ーベトナムから
ベトナムの中部ダナンは、川に寄り添う小さな漁村から発展していった町だ。
今でこそダナンはビーチを受け皿とした観光業が盛んだが、ひと昔前までは漁師が町の発展を支える担い手だった。漁港を訪ねると、何百隻もの木造漁船が一星紅旗のベトナム国旗を掲げて出漁を待っている。
ダナンから南シナ海を望み400キロほど西にあるのが西沙諸島で、その周辺はマグロなど回遊魚の好漁場だ。遠洋漁業から帰って来た漁船を見ると、人の背丈を越えた大型の魚が陸続と運ばれていく。
市場では高級魚ハタも目に付く。身の締まった白身のハタは日本料理では味わい深く、人気がある。ただベトナムでの扱いは一般魚で、価格は安い。もし市場で縞(しま)模様のハタを見つけたら、素通りするのはもったいない話だ。
3枚に下ろして、刺身で十分いける。わさびがなければベトナム版レモンのライムをひと絞りしてかければなかなかの代物だ。頭と骨の部分を湯にかければ、いい出汁(だし)もとれる。雑炊にすればタイのお頭で作ったものに負けない逸品だ。
ベトナムでは皮も空揚げにして食べる。これを雑炊のトッピングにすれば、逸品が絶品に変わる。
そもそも皮というのは、栄養素の塊みたいな部位だ。果物や野菜も皮の部位を大事に調理すれば、食卓は急に華やぎを増すように、魚の皮も捨てるという選択肢はない。