【上昇気流】桜に対する日本人の思いが強い


 桜は開花にも散る時にもなぜか心を引かれる。古来、万葉集や古今集などの歌に詠まれたほか、俳句でも名句が多い。それだけ桜に対する日本人の思いが強いからだろう。

 山や川沿い、公園、田畑の傍など、どこで花見をしても美しいが、特に寺院の桜は印象深い。神社の場合、松、杉、ヒノキなどの常緑樹が植えられている。神聖視されてしめ縄が張り巡らされている神木には常緑樹が多い。

 そこには、永生や再生への願いがあるのかもしれない。寺の場合は、梅や桜、イチョウなどの落葉樹がよく見られる。背景に仏教の思想があるのかも。開花の期間が短い桜は、仏教の生を諸行無常とする考え方とどこか重なっている気がする。

 といっても、神社であろうが寺であろうが、どちらでも似合うのが桜だ。花は開花が一番の見どころで、散る時には見向きもされない。その意味では、どちらもいい桜は特異な花であるとも言える。

 この桜の開花と落花は気温と関わりが深く、低温のまま環境を維持すると、開花期間が通常よりも長くなるというテレビ番組の実験を見たことがある。だが、桜がずっと咲いているというのはどこか違和感がある。やはり桜は早く散るから名残惜しいのである。

 きょうは、日本さくらの会が1992年に制定した「さくらの日」。桜を通して日本の自然や文化について関心を深める日だという。ちょうど花見に出掛けるのにはふさわしい日だと言っていい。