【上昇気流】「現代の著名人の中で、プーチンはもっとも謎多き人物だと言っても過言ではない」


クリミア半島併合から8年の関連行事で、観衆に手を振るロシアのプーチン大統領=18日、モスクワ(AFP時事)

 「現代の著名人の中で、プーチンはもっとも謎多き人物だと言っても過言ではない」――。『プーチンの世界』(新潮社)の著者フィオナ・ヒルさんとクリフォード・G・ガディさんが「日本語版に寄せて」で書いている。

 著者が目指したのは「プーチンをより予測可能にすること」。2015年に米国で出され、翌年に日本語版も出された。ロシアによるウクライナ侵攻でプーチン大統領の人物像がはっきりしてきたが、本書はその人柄とつくり上げた独自の政治体制を理解させてくれる。

 「プーチンは、ソ連崩壊後に形成された現在の世界の政治および安全保障秩序は、ロシアの“特別な役割”を否定するだけでなく、主権国家としての存続を脅かすほど不利な立場に置くものと考えている」。

 そう結論を提示する。ロシアが世界的に高い地位を誇るべきだという考えは、彼の発明ではないともいう。00年代からプーチン氏はロシア正教への信仰を語り、破壊された教会も再建した。

 しかし、1990年代に破壊されたレーニン像やスターリン像も元に戻した。レーニン廟(びょう)の撤去案があったが、そのまま保存された。暗黒のページがあっても、ロシア国家の歴史の一部なのだと彼はいう。

 西側の人々はソ連崩壊後、ロシアは無神論共産主義をどのように位置付け、対処したのか、関心が強かった。だが、それはなされないまま、スターリンの勝利が強調され、共産主義の誤りを知る国民はごくわずかだ。