【社説】新型コロナ後遺症 リスクや労災認定の周知を


新型コロナウイルス

 「第6波」のピークを越えたとされる新型コロナウイルスだが、新規感染者は高止まりの傾向が見られる。感染者の中には、後遺症に苦しむ人が少なくない。後遺症は重症、軽症にかかわらず発症しており、仕事や生活への深刻な影響が出ている。国は後遺症のリスクにもっと警鐘を鳴らすべきである。

 長期化するケースも

 神戸市が昨年12月から今年1月に実施した調査によると、変異株「アルファ株」が流行していた2021年4月に感染した1621人のうち、48%の人が「後遺症あり」と答えた。症状では「倦怠感」が56%で最も多く、「筋力低下」「せき」「息苦しさ」が36%、「味覚障害」が32%となっている。

 後遺症が治るまでに要した期間は半数近くが30日以内と答えているが、長期化するケースも目立ったという。筋力低下を訴えた人の約4割は現在も治療中と答えている。

 東京都が昨年5月から今年1月に後遺症を訴え、都立病院を受診した人ら230人を調査したところ、40%に当たる93人が倦怠感を訴え、症状が半年以上続いたケースもあった。ほかに「息切れ」44人、「頭痛」38人、「嗅覚障害」37人などだが、65%の人が複数の症状に悩まされ、四つ以上の症状の人も26人いた。症状が半年以上続いた人も12人いた。

 風邪や季節性のインフルエンザなどと比べ、新型コロナは後遺症の発症率の高さや、その重さ長さが大きな特徴と言える。

 重症か軽症かを問わずに発症する点に警戒が必要だ。若い人たちは高齢者に比べ重症化しにくいとされ、それが警戒感を緩める一因となっているが、軽症でも深刻な後遺症に苦しむ人が出ている。若い人にとっては、コロナそのものより後遺症の方が脅威と指摘する医師もいる。

 後遺症の症状や重さは人によってさまざまだが、心筋炎なども多数報告されている。米国の医学雑誌に発表された研究によると、心不全など命に関わる心臓疾患を引き起こすリスクを高めた。なお研究途上にあり、少しずつ調査データは出てきているが、その全体像が早く明らかにされることが求められる。

 記憶障害や集中力の低下が深刻化し、頭にもやがかかったようになる「ブレーンフォグ」と呼ばれる症状で就労が困難になるケースも出ている。治療法が確立されていないため、長期の休業や失業を招き、経済的苦境に立たされることもある。

 国が昨年2月までに患者525人を追跡調査したところ、陽性の診断から半年たった段階で思考力や集中力の低下を訴える人は11%に上り、味覚、嗅覚の異常よりも高かったという。

 労働基準監督署に相談を

 厚生労働省によると、昨年9月末までに業務に関連して新型コロナに感染し労災に認定された人は全国で1万4567人に上る。長引く後遺症のために療養や休業に追い込まれた場合も労災の対象となる。まずは労働基準監督署に相談してほしい。

 後遺症に苦しむ人が増える中、労災認定による補償については十分知られているとは言えない。国は後遺症のリスクと共に国民に周知徹底すべきだ。