【社説】北方領土 露の不法占拠への批判強めよ


北方領土の島々と面積

 

 ロシア外務省が、北方領土問題を含む日本との平和条約締結交渉を現状では継続するつもりはないと表明した。

 ロシアのウクライナ侵略で日本が対露制裁を科したことへの対抗措置であり、日本固有の領土である北方領土を返還する意思がないことを示したものだ。許し難いが、予想されたことではある。

 平和条約交渉中断を表明

 ロシア外務省は声明で「ウクライナ情勢に関連して日本がロシアに対し行った一方的な規制が、明らかに非友好的であることを考慮し、措置を講じた」と強調。平和条約交渉に関し「公然と非友好的な立場を取り、わが国の利益を損なおうとする国と2国間関係の基本文書の調印を協議することは不可能だ」と主張した。

 また、北方四島のビザなし交流の停止や共同経済活動をめぐる協議からの離脱も発表した。ロシアが、日本固有の領土である北方領土に関してわが物顔で振る舞うことは容認できない。

 もっとも近年のロシアは、北方領土の不法占拠を正当化しようとする姿勢が目立った。2018年11月の日露首脳会談では1956年の日ソ共同宣言を基礎として平和条約交渉を進めることを確認したが、2020年7月にはロシア憲法の改正で領土割譲の禁止が明記された。

 ウクライナ侵略後も、北方領土に進出する内外企業に税優遇措置を適用する特区法を制定するなど日本の主権を無視する政策を進めた。ロシアは北方四島について「第2次世界大戦の結果、ロシア領になった」と不当な主張を繰り返している。

 旧ソ連は第2次大戦末期、当時まだ有効だった日ソ中立条約に違反して対日参戦し、北方領土を不法占拠した。他国の主権や「法の支配」をないがしろにするロシアの国家体質は、ウクライナ侵略にも表れていると言えよう。

 ソ連の旧満州侵攻では、日本の民間人が多数犠牲となった。ウクライナでもロシア軍による民間人虐殺が続いている。ウクライナでは人口の約4分の1に当たる1000万人以上が国内外で避難民となっている。

 親露派が実効支配するウクライナ東部ドンバス地方では、2300人以上の子供が強制的に移住させられたという。真偽は確認できないが、事実であれば重大な人権侵害である。子供を人質にし、停戦協議でウクライナに譲歩を迫る狙いがあるのだとすれば、卑劣極まりない。

 ロシア外務省は平和条約交渉の中断について、全ての責任は「意図的に反露的路線を選んだ日本側にある」と非難した。こうした責任転嫁も、プーチン大統領がウクライナのゼレンスキー政権を「ネオナチ」と批判し、侵略を正当化していることに通じるものだ。

 尖閣の防衛体制強化を

 交渉中断に対し、岸田文雄首相が「極めて不当で断じて受け入れることができない。強く抗議する」と述べたのは当然である。日本はロシアによる不法占拠への批判を強めるべきだ。

 一方、ロシアと友好関係にある中国は、沖縄県・尖閣諸島の奪取を狙っている。尖閣の防衛体制も強化する必要がある。