【社説】ウクライナ侵略 露の蛮行への制裁強化を
ロシアによるウクライナ侵略では、ロシア軍が包囲している南東部マリウポリで市街戦が一段と激化し、約400人が避難していた可能性がある美術学校がロシア軍の爆撃を受けた。
これより前に空爆された劇場でも、数百人が地下に閉じ込められているとされるが、激しい砲撃がやまず救出作業は難航している。
南東部の市民を強制連行
これだけでも許し難いが、市当局によれば市民4000~4500人が強制的にロシアへ連行されている。強制労働のため、ウクライナに近接するロシア南部タガンログに移住させられる可能性があるという。
旧ソ連が第2次世界大戦後、日本兵ら約60万人を連行し、強制労働をさせたシベリア抑留を想起させる蛮行である。シベリア抑留では、酷寒や飢え、重労働によって約5万5000人が死亡した。
ロシアはウクライナの「非武装化」や「中立化」に加え、クリミア半島でのロシアの主権や親ロシア派の独立を承認するよう求めている。ウクライナがのめない条件を突き付け、非人道的な攻撃を繰り返す。これが、世界の平和と安全の維持に主要な責任を持つ国連安全保障理事会の常任理事国がすることなのか。まさに「悪の帝国」以外の何物でもない。
西側諸国は結束してロシアに対抗し、圧力をかけ続ける必要がある。日米欧はウクライナ侵略に抗議し、ロシアの一部銀行を世界の銀行決済網「国際銀行間通信協会(SWIFT)」から排除した。米国はロシア産の原油や液化天然ガス(LNG)などの禁輸に踏み切ったが、制裁をさらに強化すべきだ。
一方、ロシア国防省は極超音速ミサイル「キンジャール」を使用し、ウクライナ西部のイワノフランコフスク州デリヤティンにある大規模な地下武器貯蔵施設を破壊したと発表した。ウクライナ侵略で極超音速ミサイルが使用されたのは初めてだ。この翌日には、南部の軍事施設も破壊したという。
キンジャールは空中発射型で、射程は2000~3000㌔。最大速度はマッハ10とされる。プーチン大統領が2018年の年次教書演説で「理想の兵器」として公表し、ロシア軍は侵攻開始前の2月19日に発射演習を実施していた。
音速の5倍以上で飛行する極超音速兵器は、ロシアや米国、中国などが開発を競っている。戦局の停滞が伝えられる中、ロシア軍が最新鋭の極超音速兵器を投入したのは、戦線の行き詰まりを打破するとともにウクライナを軍事支援する西側諸国を威嚇する狙いがあろう。
ロシアが実戦で使用したことで、極超音速ミサイルの脅威はさらに高まったと言えよう。極超音速兵器は既存のミサイル防衛システムでは迎撃が困難とされる。日本は敵基地攻撃能力の保有を急ぐ必要がある。
中国に支援させるな
バイデン米大統領は中国の習近平国家主席との首脳会談で、中国がロシアへの支援に踏み切った場合の対抗措置を示唆して警告した。
国際社会は中国に対露支援をさせてはならない。