【上昇気流】建築事務所トップと若手スタッフの対話。


建築事務所トップと若手スタッフの対話。若手は「もっと住民の声を聞くべき」として事務所トップを批判する。NHKテレビで放送されたものだが、若手の言い分は「建築家に個性は不要」ということのようだ

建築は芸術とされることもあるが、若手は建築に芸術や自己主張の類いはいらないと考える。だから「住民の意見を聞け」となる

事務所トップは無論若手に反論するのだが、昨今の流れは若手の側にあるとライターの速水(はやみず)健朗(けんろう)氏は「なぜ批評は嫌われるのか」(「中央公論」4月号)で述べる

この表題は、そもそも「批評は嫌われる」という前提で書かれている。一方的な論なのだが、半面説得力もある。批評は「自分はAと考えるので結論はB」という流れによって成立する。建築の芸術性も批評と同じ。ただ、今の風潮は「何かの状況を個人が勝手に解釈するのは暴力」という方向に向かっているらしい

「自分はこう考える」は暴力、という流れが自然とされているようなのだ。ただ、「何が自然なのか」という判断基準は必ずしも安定しない。その辺の際どさを指摘している速水氏の論には納得できるところがある

「作り手と受け手は対等」という考え方もあるようだ。「芥川賞作家とその読者は対等」とした場合、何がどう対等なのかははっきりしない。それでも「自分の考えを述べる」という方法が、今の日本では人気がなさそうだという空気感だけは何となく分かる。