EU首脳会議 ウクライナ危機めぐり協議


国防費増額で加盟国合意

ベルサイユ宮殿に集まった欧州連合(EU)首脳=10日、パリ近郊(AFP時事)

 欧州連合(EU)は10、11日、フランスのベルサイユ宮殿で首脳会議を開催し、「ベルサイユ宣言」を採択、軍事装備をウクライナに提供するとともに、域内の安全保障体制の再構築の必要性を確認した。ボレル外交安全保障上級代表(外相)は、ウクライナ防衛のための予算を、総額を10億ユーロ(1280億円)に倍増することを提案した。

 閉会宣言で、加盟27カ国首脳は「防衛能力と革新的な技術に対して、さらなる投資を行う」必要性と、「国防費の大幅増額」に同意し、安全保障の再構築に取り組むことを確認した。

 ただ、議長国フランスのマクロン大統領は、北大西洋条約機構(NATO)が要請している加盟国国防予算の国内総生産(GDP)比2・0%への引き上げには言及しなかった。一方で欧州の防衛力の再構築とエネルギー自給率強化に焦点を当てた議論が行われた。

 共同声明で全加盟国は、ウクライナへの全面的な支援を確認し、ロシアの侵攻とベラルーシの共謀を強く非難。「民間人の犠牲者を引き起こしたロシアによる攻撃についての国際刑事裁判所による調査の開始」を支持し、「原子力施設の安全を確保すること」を求めた。

 さらに「難民や彼らを歓迎する国々との連帯維持」「制裁によるロシアとベラルーシへの圧力を強化」「ウクライナの欧州志向と選択、その運命を決定する権利を認め、ウクライナが欧州の家族に属していること」を確認。欧州委員会に「ウクライナ、モルドバ、ジョージアの加盟申請に関する意見を調査」するよう要請した。

(パリ・安倍雅信)