ウクライナ 露が原発に攻撃 火災発生
原子炉停止 放射能漏れなし
ゼレンスキー氏「核テロ」と非難
ウクライナ南東部にある欧州最大規模のザポロジエ原子力発電所で4日未明、ロシア軍の攻撃を受けて火災が発生したが、消し止められた。火災が起きたのは研究所とその関連施設。原子炉は損傷せずに停止し、放射能漏れはなかったものの、爆発すれば大惨事を引き起こす恐れがあった。現地からの情報では、同原発はロシア軍に制圧された。
ウクライナのゼレンスキー大統領は「火災はロシア軍の仕業だ。ロシアは今や核テロを実施している」と激しく非難。クレバ外相は「原発にロシア軍の砲弾が着弾した場合、チェルノブイリ原発事故(1986年4月)の10倍以上の被害が欧州全土に生じる危険性がある」と述べ、原発施設周辺の軍事攻撃を即刻中止するよう訴えた。
ウィーンに本部を置く国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は4日、「ウクライナ当局から原発の放射線量の変化はなかったという報告を受けた」と説明。一方で、「原子炉が損傷すれば、深刻な危険が生じる。核物質の安全とすべての核施設の安全な運用を危うくする措置や行動を控えるように要請した。今のところプラントは正常に稼働しており、核物質は引き続き管理されている」と語った。
ウクライナには稼働中の原発が4カ所、計15基の原子炉があり、電力の約半分を供給している。
ロシアの侵攻が始まって以来、ウクライナの核関連施設はロシア軍の攻撃を数回受けた。
ウクライナは2月27日、「ミサイルがキエフの放射性廃棄物処分施設の敷地に衝突したが、建物の損傷や放射性物質放出の兆候の報告はなかった」とIAEAに通知。また、ハリコフ北東部の都市近くにある同様の処分施設でも変圧器が破損した。
ロシア軍はチェルノブイリ原子力発電所地域を制圧したが、一時期、周辺の放射線レベルが上昇した。ウクライナ当局の説明によると、1986年の事故でまだ汚染されている土壌を大型軍用車両がかき混ぜたことが原因だという。
ゼレンスキー氏はバイデン米大統領と電話で会談し、ザポロジエ原発の状況について説明。両首脳は攻撃停止を求めることで一致した。また、ジョンソン英首相は国連安保理にロシア軍の原発攻撃に関する緊急会合の開催を要求した。
(ウィーン・小川敏)