【上昇気流】ロシアはウクライナ侵攻による自国兵士の犠牲者について沈黙してきた


3日、ウクライナ北東部ハリコフで、砲撃により破壊された建物(AFP時事)

 第1次大戦末期の1918年10月、ドイツの若き学徒兵が戦死した。その日は全戦線にわたって穏やかで、司令部報告にはこうあった。「西部戦線異状なし、報告すべき件なし」(レマルク著『西部戦線異状なし』新潮文庫)。

 ロシアはウクライナ侵攻による自国兵士の犠牲者について沈黙してきた。それでこの長編小説を思い浮かべた。

 ようやく2日に「軍戦死者498人」と公表したが、ウクライナ側は7000人以上としている。その数はさらに膨らむだろう。身勝手な大義で戦争を始めたプーチン大統領にとっては取るに足りないことか。

 国連の緊急特別会合では、ウクライナのキスリツァ国連大使が死亡したロシア兵士の携帯電話に残されていたメッセージを読み上げた。「何が起きてるの?」「母さん、僕はウクライナにいるんだ。本当の戦争が始まっているんだ」――。兵士は徴兵された若者だった。

 6000人以上の戦死者を出したチェチェン紛争では「ロシア兵士の母の委員会」が赤の広場で反戦デモを行った。今回も各地で反戦の声が上がる。ロシア研究家の中澤孝之氏によれば、退役将校組織が「戦争に反対し、プーチン大統領の辞任を要求する声明」を発表している(小紙3日付ビューポイント)。

 レマルクが描く学徒兵は戦場で思いを巡らすが、たった一発の銃弾でその思考を止められた。ロシアの若き兵士は考える暇もなかった。罪深きプーチン氏よ、直ちに撤兵せよ。