暴走する国連、国際法無視して同性婚推奨
昨年6月の米連邦最高裁判決で同性婚が全米で合法化されるが、これを絶賛したのが潘基文国連事務総長だ。潘氏は「(同性愛)カップルの法的認知を否定することで差別の扉が開かれる。判決はこの扉を閉じるのを助ける偉大な前進だ」と述べた。同性婚を禁じることは差別であり、他国も米国に追随すべきと言わんばかりだ。
世界人権宣言とこれを条約化した国際人権規約は、共に婚姻を男女のものと明記している。また、同性婚を認める国は20カ国余りにとどまり、国連加盟国の9割近くは依然、結婚の定義を変えることに慎重だ。
にもかかわらず、国連は同性婚を含む性的少数者(LGBT)の権利拡大を強力に推し進めている。米保守系法曹団体「自由防衛同盟」の国際組織「ADFインターナショナル」のポール・コールマン氏は、米オピニオンサイトへの寄稿で「国連官僚たちは国際法や大多数の加盟国の立場から独立したアジェンダで活動している」と、国連の“暴走”を批判した。
潘氏は2014年に国連の同性愛職員が同性婚合法化国で結婚すれば、国籍に関係なくその婚姻関係を認め、異性の夫婦と同等の待遇を与えることを決定するが、これは各国と相談せずに独断で決めたものだった。翌年、ロシアが撤回を求める決議案を提出するが、米国が猛烈に反対し否決されている。
国連は13年からLGBTの権利拡大を訴える「フリー・アンド・イコール」という大規模な啓蒙キャンペーンを展開中だ。その一環で今年2月に記念切手を発行するが、その中には男性カップルと少女が描かれた絵柄もある。同性愛カップルが養子をもらうことを推奨しているかのようだ。
オバマ米政権はリベラルな官僚たちが主導権を握る国連機関を支援・利用しながらLGBTアジェンダを推し進めている。米国際開発局(USAID)が実施する「ビーイング・LGBT・イン・アジア」というプロジェクトは、国連開発計画(UNDP)などと共同でアジア諸国のLGBTを支援する事業だ。
また、オバマ政権は昨年8月、LGBTに対する過激派組織「イスラム国」(IS)の迫害をテーマにした国連安全保障理事会の非公式会合を招集。「安保理は他のグループに対する大規模な迫害については会合を開いたことがなく、多くの理事国から焦点が異常に狭いとの指摘が出た」(コールマン氏)とされる。
先月、国連で初めて開催されたLGBTの権利に関するハイレベル会合では、ジョー・バイデン米副大統領が「どの政府も社会も個人も、誰を愛するか指示しようとすべきではない」と主張。潘氏も「いくつかの国では歴史の潮流に逆らい、同性愛者への厳罰を新たに設けた」と批判し、同性愛を禁ずることは時代遅れだと断じた。
国連にはLGBTの権利拡大を積極的に支援する国々などからなる「LGBTコアグループ」があるが、アジアで唯一メンバーとなっているのが日本だ。日本も国連官僚とオバマ政権が推進するLGBTアジェンダに手を貸しているのである。
(ワシントン・早川俊行)