急増するスクランブル

国防最前線・南西諸島はいま

第1部 与那国島・陸自駐屯地(2)

自民党政調会審議役 田村重信緊急リポート

 台湾で万一、有事が発生し、中国が侵略行動に出た場合、真っ先に危険が及ぶのは与那国島だ。1996年の台湾危機では、中国が台湾の総統選挙に軍事的圧力をかけ、与那国島の近海に中国人民解放軍のミサイルが着弾。この影響で、地元漁師は操業の一時見合わせを余儀なくされた。

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筆者にレクチャーする塩満大吾司令

 沖縄本島最南端から与那国島までの1000㌔の広大な地域には、宮古島の航空自衛隊の小規模なレーダー基地があるだけだ。しかも、与那国島には祖納と久部良という二つの集落に警官が1人ずつ計2人いるだけだった。

 防衛の空白が生じているという危機感が次第に強くなり、自衛隊誘致は与那国島にとって長年の懸案だった。

 中国の海洋進出、軍備拡大、さらには、台湾海峡の情勢は予断を許さない。昨年度、空自が戦闘機を緊急発進させたスクランブルの回数は873回。そのうち、中国機に対するスクランブル回数は前年度と比べ107回増加し、スクランブル回数を公表した2001年以来、最多となった。

 塩満大吾司令は筆者へのレクチャーの中で、「与那国島は日本の最西端で尖閣諸島および台湾・中国本土の近傍に位置し、国境防衛、東シナ海周辺の警戒・監視に重要な位置付けが示された」と配備の背景を説明する。

 隊員160人のうち、女性は8人だ。九州出身者は全体の4分の3。沖縄出身者は15%、沖縄の離島出身者は5%になる。唯一の与那国出身者と女性隊員2人を含む8人の隊員から直接、話を聞いた。

 その中には与那国という環境に憧れて志望した隊員もいるが、多くは新設された部隊で自分の能力を発揮したいという志が動機だった。志気の高いことに感銘を受けた。

 与那国町議会の糸数健一議長は、「与那国への自衛隊配備は南西諸島防衛の起爆剤となった」と評価をしている。だだ、「離島警備、インフラ、過疎化対策などもろもろの問題を政府全体で『チーム安倍』として対処してほしい」と要望する。

 「尖閣諸島のように無人化にならないためにも、防衛省以外の部局を超えた支援体制が必要。それで初めて安全保障が完結する」とも話す。

 長崎県の対馬には陸海空の3隊がある。外間守吉町長と一緒に対馬を訪問した与那国防衛協会の金城信浩会長は、「最初は500人規模だったが、2回目は700人、そして現在は1000人に増えている」と指摘した。

 与那国も対馬と同じ国境の島だ。防衛協会は、将来は航空自衛隊と海上自衛隊が駐留することに期待を示す。隣接する南牧場には緊急時、ヘリコプターが着陸できる。海上自衛隊船艇の入港が可能な久部良港は駐屯地に近い。港が整備されれば、海上自衛隊の誘致も考えられる。