地域のために地域とともに、住民と隊員の心が一つ
第1部 与那国島・陸自駐屯地(4)
自民党政調会審議役 田村重信緊急リポート
「地域のために 地域とともに」という言葉が司令の要望事項としてエントランスホールのモニターに映し出されている。
駐屯地司令で与那国沿岸監視隊長の塩満大吾2等陸佐は、宮崎県出身で子育て世代の38歳だ。塩満司令は、まだ若々しい青年のように生き生きとし、モットーの実体のような人物だ。
駐屯地の外にはたった一つの官舎(隊員用宿舎)があるが、司令は妻子とともに生活し、すっかり地域に馴染(なじ)んでいる。
官舎は島で最も人口が多い祖納集落にある。2階建てのアパートで18家庭が生活している。駐屯地と同様に赤瓦の屋根とシーサーが、沖縄らしさを感じさせる。
官舎には、上官クラスが優先的に暮らすのではなく、家族同伴者が優先的に入居できるという。
司令の部屋の中まで案内してもらったが、バリアフリー仕様で、子供もお年寄りも生活しやすい。台風対策として分厚い窓の外側にはアルミサッシがある。加えて、3台のエアコンが設置されているから、蒸し暑い与那国の夏も快適に過ごすことができそうだ。
官舎の裏側は広い空き地が広がり、そこは自然の宝庫。地元では「アヤミハビル」と呼ばれる巨大蛾ヨナグニサンの姿も見ることができる。都会から移住した自衛官や家族にとっては自然に触れ合う良い機会だ。
他の二つの集落でも官舎を建設する計画がある。当面は、駐屯地内のプレハブか、島内の空き家で暮らすしかない。
自衛官を一カ所に集中して住まわせず、あえて三つの集落、五つの公民館(自治体)に分散させるのには大きな理由がある。それは各地域からの要望からで、また、隊員の居住地が偏ってしまうと、地域の祭事などさまざまな行事に支障を来してしまうという特殊事情もある。
島内の青年陸上競技大会には自衛隊員が3地区に分かれて参加した。隊員の活躍が光り、比川地区が珍しく総合優勝を果たした。この地区は島外からの移住者が多く、自衛隊に対する評価が二分されている地域だ。この時ばかりは、住民と隊員の心が一つになったと地域住民は振り返る。最後は「来年も優勝しような」と意気投合したという。
「ほぼ毎月、祭りごとや運動会など何らかの地域の行事があるが、どんな時も自衛隊員と家族が参加してくれる」と金城会長は目を細める。また、豊年祭のお供え物に使うカニの捕獲も住民と一緒になって頑張ってくれたと喜ぶ。
8月7日には駐屯地を開放して行われた「第1回駐屯地夏祭り」には島民の3人に1人に当たる約500人が参加した。
新たに赴任した自衛官がすんなりと地域に親しめるのも、20人の自衛官が1年前から島内で生活をし、「模範的隊員」として地域に溶け込んだからだ。
1年前から配置された隊員の頑張りを最初から見届けている金城会長は、「おかげで、自衛隊に偏見を持っていた人々が理解を示すようになったのも事実だ」と話した。