基地と経済のリンク、にぎわい取り戻す起爆剤に
第1部 与那国島・陸自駐屯地(6)
自民党政調会審議役 田村重信緊急リポート
与那国町は戦前から漁業と農業を中心に、東洋一とも言われた鰹節(かつおぶし)工場を中心に産業が発展し、最も多い時で約1万2千人の人口を有した。
自衛隊誘致が島に再びにぎわいを取り戻すための起爆剤となることは誰もが認めることだ。自主財源に乏しい与那国町では「基地と経済のリンク」の重要性を否定する島民は少なく、堂々と自衛隊配備の見返りとなる経済振興策、さらには、安全安心な暮らしの担保を求めている。
糸数健一議長は、「離島ネットワークを構築してほしい」と訴える。八重山地域の移動は石垣島が拠点になっている。西表島から与那国島に行く場合は、いったんフェリーで石垣島に渡って、飛行機で与那国島に飛ぶ。また、台湾との直行便はない。将来は離島間で網の目のような交通網ができることを望んでいる。
観光業界は現在、ジレンマに陥っている。
「航空会社は宿泊施設が足りないから飛ばない」「ホテル業界は、航空便の数が少ないから部屋数を増やす必要はない」
こうした問題について、糸数議長は「皆、誰かのふんどしで相撲を取ることばかり考えている。いつもこうした堂々巡り」だと批判する。
「誰かがどこかで仕掛けをしないといけないし、国、県、町が知恵を出し合って同時進行で動かさなければならない」と糸数氏は主張する。そのタイミングが今であることは異論がない。
夏休みシーズンで観光客が増加する時期には、宿泊地が不足する。キャンプなどで自衛隊が貢献できるものがあるか、検討してもらいたい。
農業と漁業の強化も急務だ。
「沖縄の他の地に比べてすべてで劣っている。第1次産業、生産・加工・流通までをする第6次産業にしても、水が必要だ」と金城信浩会長は訴える。町内のかんがい施設は、貢馬(くんま)地区の農地にスプリンクラーが設置されているのみで、後は雨水に頼っているのが現状だという。
自ら牛舎経営もしている金城会長にとっては、水の確保は死活問題だ。サトウキビと水稲といった主要な農産物に大きく影響する。
外間町長は昨年度から地下ダムの導入に向けて本格的に動き始めている。「台風などの自然条件に左右されない農業経営を行うためには、国営かんがい施設の整備による安定した水源の確保が必要不可欠」と、関係各所に要請している。
農業・漁業従事者の高齢化に伴い、担い手が不足しているという現状もある。金城会長は「漁協を中心に水産加工品の生産による漁業振興や U・Iターン者受け入れに取り組んでいるが、来る人がいても、定住者が少ないのが現状だ」と訴え、解決策として、宿泊施設を備えた漁民センターの設置を希望している。
高齢化と過疎化が進む島では、安心な暮らしを求める住民の声は大きい。
駐屯地内には新しい医療施設があり、消防車も救急車もある。設備は他の駐屯地の医務室に比べてもはるかに充実している。緊急患者を受け入れる体制が整えば、島民の安心安全が保証されることになる。
「南西諸島への部隊配備の先駆けとしての与那国駐屯地がモデルケースになれば、宮古島、石垣島の自衛隊配備は必ずうまくいく」と糸数氏は強調した。
(おわり)