二重国籍禁止法案の真意
国益優先は国会議員の責務
日本維新の会幹事長 馬場伸幸氏
民進党蓮舫代表が台湾国籍をも保有することが発覚して浮上した二重国籍問題は、その後、十数人の国会議員が二重国籍者であると指摘され、波紋が広がっている。年明け解散が取りざたされる中、日本維新の会が今国会に、国会議員の二重国籍を禁止する法案を提出した。同党の馬場伸幸幹事長にその真意を聞いた。(聞き手=政治部・小松勝彦)
日本維新の会が国会議員の二重国籍を禁止する法案を提出した目的は何か。

ばば・のぶゆき 昭和40年大阪府堺市生まれ。昭和61年、参議院議員(当時)中山太郎秘書。平成5年、堺市議会議員補欠選挙で初当選(6期)。23年、同市議会第76代議長に就任。24年、衆議院選挙初当選。現在2期目。
国会議員は重要な情報を知り得る立場だ。与党の一員になれば閣僚やそのトップの総理大臣になる可能性もある。つまり、国益を代表する立場、国家機密を握る立場になるわけだ。例えば、日本と他国との間で紛争が起きた場合、その相手国の国籍も持つ二重国籍状態の首相、閣僚が、明確に日本側の立場に立つのかという問題が出てくる。とりわけ、自衛隊の最高指揮官は総理大臣だが、このポストを二重国籍者に任せることはできないというのが、わが党の基本的な考えだ。国会議員が国益を優先することは当然の務めであり、二重国籍は認められない。
蓮舫氏の二重国籍問題をめぐる対応の問題点は。
蓮舫氏の対応以前に、代表選期間中の民進党の対応自体がおかしい。連日、蓮舫氏の二重国籍問題がメディアで流れているのに、ずっとこれを無視して代表選挙をやっていた。一度、代表選を止めて、きちんと蓮舫さんに説明をさせて、その上で仕切り直しをすべきだった。民進党のリスク管理はめちゃくちゃだ。
自民党は、公認候補選定の際、日本国籍のみの保持者に限定する方針とされるが、こうした自主規制では不十分か。
安倍政権が国民の高い支持を得続けているのは、決める政治をやっているからだ。この問題も与党としてきちんと対応すべきだし、立法府の人間として法律の不備を改めるのは当然の責務だ。党としてちゃんと対応しますというだけでは不十分だ。
この問題に関する安倍首相の姿勢をどう評価するか。
安倍首相は3日の衆院予算委員会で、自民党には二重国籍者はいないと明言したが、直後に、同党の小野田紀美参院議員が米国との二重国籍状態だということが明らかになった。さらに、与野党で十数人いるという話も出てきた。安倍首相はこの問題が広がることを恐れているのかもしれないが、われわれの主張が正しいと思ったら、与党も乗ってきてほしい。与党だから、野党だからという国民不在の政治をやっている時代は終わった。
現在、二重国籍状態の国会議員はどう対応すべきか。
選挙に立候補する時点で、プライバシーはなくなる。年齢や出生地、学歴・職歴などの経歴をメディアの調査ではすべて記入するようになっている。それらが投票判断のよりどころになるからだ。これらの事項以上に重要な国籍を隠匿して立候補するのは、有権者を騙(だま)していると言われても仕方がない。堂々と二重国籍であることを明らかにすべきだ。
国会議員の二重国籍を禁じても、二重国籍の民間人閣僚登用の余地は残されている。
わが党は12日に、「国の行政機関の職員に係る二重国籍禁止法案」を提出した。本来は国会議員の二重国籍禁止と合わせて一本で出したかったが、調整が遅れたので別々に出すことになった。国の行政機関の職員には閣僚も含まれ、この法案により二重国籍の民間人登用も規制される。
二重国籍者を排除するのは人種差別だという意見もあるが。
われわれは一般国民の方の二重国籍を問題視しているわけではなく、差別ではない。日本では二重国籍の解消を強制していないし、二重国籍者は40万~50万人いるというデータもある。国際結婚も増加しているので、今後この数字は拡大していくと思う。あくまでも、公権力を使う立場にある者は駄目だという話だ。
日本維新の会は、今国会に100本の法案を提出すると意気込んでいる。
私は大阪選出だが、国会は筋書きのできた吉本新喜劇のようなことをやっている。昨年の安保法案の時もひどかった。当時、私は維新の党の国対委員長だったから分かるが、与党と民主党(当時)の間で水面下で話ができていた。まず与党が強行採決をし、民主党が委員長席に詰め寄る、というように全部打ち合わせができていた。そんな旧態依然の国会運営で日本や国民を守っていけるとは思わない。
われわれは維新スピリッツを見せるつもりだ。われわれが政権を預かる立場になれば、こういう政治を行うということを提出法案を通じて国民に理解してもらいたいし、また、政策立案能力があることをアピールしたい。
二重国籍を禁止する法案の成否よりも、提出自体に意義があるということか。
もちろん出した以上は成立を目指す。わが党の丸山穂高代議士は、4日の衆院予算委員会で、外国資本による不動産取得の問題について質問をした。二重国籍問題もそうだが、国民は、わが国の湿原や水源地、そして島々が外国資本によって買いあさられていることも知らなかったと思う。われわれはこうした国家基盤に関わる問題を国民に知ってもらうことが大事だと思っている。そして、これらの対策を提示することで、日本維新の会に政権を任せられるのではないかと、国民の信頼を得られるよう確実に前に進んでいこうというのがわれわれの考えだ。