横浜の「日本新聞博物館」が今夏リニューアル
情報過多の時代、取捨選択する力を
1871年、「横浜毎日新聞」が産声を上げて145年、日刊新聞発祥の地横浜に日本新聞博物館ができて16年が過ぎた。会館以来6万人前後の来場者を迎えていたが、老朽化や情報化社会に対応するため、約1年かけて模様替え、今夏リニューアル、体験型の博物館に生まれ変わった。秋の新聞週間(毎年10月15日から1週間)にちなみ、大人も子供の楽しめる「新聞博物館」を横浜観光に組み込んでみては…。(太田和宏、写真も)
新聞作成に熱中する“未来の記者”たち
体験型・地域密着で来館者増目指す
リニューアルに当初から携わってきた吉澤正一館長は、新聞博物館の基本として①新聞業界を象徴するような資料の収拾、研究、展示②見学に来てもらった子供たちに新聞を含めて、ジャーナリズムを知ってもらう③観光地横浜に来てもらった人に観光スポットの一つとして、来館してもらいたい――という三つを挙げる。
神奈川県庁、横浜スタジアムの近くにある同館を訪れると、静岡新聞から寄贈された、本当に使用されていた巨大なオフセット輪転機が出迎えてくれる。同館のシンボルモニュメントとして設置され、リニューアルを機に、新聞ロール部分にプロジェクションマッピングを施している。
常設展示は「コレクションギャラリー」「情報の海」「真実を届ける」「新聞が届くまで」「新聞のひろば」の五つに分かれている。
「コレクションギャラリー」では、明治期に印刷技術を飛躍的に向上させたマリノニ型輪転機から江戸期のかわら版、新聞の創刊号、政策危機などを展示。「情報の海」では巷(ちまた)に溢(あふ)れる情報と私たちとの関わりをアニメーションで描いたりする。「真実を届ける」では正確な情報を届けるための記者の思い、新聞の役割、新聞記者のオンとオフをタッチパネル展示で紹介するなど、楽しく学ぶ仕掛けも。
「新聞が届くまで」では毎日、読者に届くまでに、印刷、配達など多くの人の手が介在していることを体験型展示とともに紹介している。「新聞のひろば」では新聞の歴史とともに、実際に新聞を手にして楽しむこともできる。
子供たちにとって、教室での授業や、パワーポイントを使用した座学よりも、ゲームなどを通じた、疑似体験的なものの方が理解が深まるようだ。
3階フロアでは「横浜タイムトラベル」と称して、横浜港周辺を再現したジオラマにタブレット端末をかざすと過去にタイムスリップできる。ペリー来航や山下公園誕生の秘密、横浜開港の謎など、歴史上の人物を取材し、謎解きをするゲームもある。取材内容を編集してオリジナル新聞を持ち帰ることもできる。
来館する子供たちに人気なのが、「新聞づくり体験プログラム」だ。元新聞記者の新聞製作工房マネジャーが「文章の書き方」「新聞の読み方」「新聞とは何か」を解説してくれ、紙面の構成、見出し、記事のアドバイスをしてくれる。
横浜市立一本松小学校の児童たちは「ゲームや展示も面白かったけれど、自分だけの新聞をつくることがもっと楽しかった。学校で考えてきたことを文章にしている」と話してくれた。編集ソフトを使って90字程度の一言記事をパソコン入力し、展示してある新聞の前で撮影した集合写真を貼り付け、見出しを入力、1時間程度でオリジナル新聞が出来上がる。
引率の丸田美枝子教諭も「国語や社会の授業で新聞を題材にしている。学校で学んだことを実際に新聞を作ってみることで表現力を伸ばすことにつながっている」と児童たちが新聞作りに熱中する“未来の新聞記者”たちに目を細める。近隣の小中学校だけでなく、修学旅行で横浜を訪れ、来館するケースも少なくない。
館長のスマートフォン、パソコン、などでつながるネット社会の膨大な情報で溢れ返る昨今、新聞を通じて「情報を見極める力が大人、子供を問わず必要になって来ている。取捨選択する判断能力を身に付けることが大切」と新聞・ジャーナリズムの役割を来館者に知ってもらいたいと館長の吉澤さん。
開館時間は10時~17時(入館は16時30分まで)。月曜休館。入場料は一般400円、大学生300円、高校生200円、中学生以下無料。







