トラブルが増す第三者による精子提供を巡って
第三者による精子提供によって生まれた子供は日本で既に1万人から2万人とも言われ、トラブルも増えている。
昨年12月、SNSで知り合った男性から精子提供を受け、出産した30代既婚女性が、男性の国籍や学歴詐称を理由に約3億3千万円の損害賠償を求め、訴訟を起こした。驚いたことに女性はその男性との性交による精子提供で妊娠した。出産後、男性が中国籍の既婚者だったことが判明し、女性は子供を児童福祉施設に預けている。
自分の子供を切望する人にとって、第三者から精子提供を受けても子供が欲しい。ただ生まれてくる子供の立場で考えればこんな無責任で身勝手な話はない。障害を持って生まれた子供を親が最後まで責任を持てるのか。両親が離婚した場合に子供は安定的に守られるのか。子供の福祉の観点からやはり問題が多い。
子供が出自を知る権利、生殖補助医療の倫理の問題など、多くが置き去りにされたまま、医療提供が進められてきた面は否めない。
こうした問題に対処するために3月、超党派議員連盟(野田聖子会長)が生殖補助医療の規定を定めた法案たたき台を公表した。それによると、提供者の情報を公的機関で100年保存、罰則付きで精子・卵子・胚の売買禁止規定などを盛り込んでいる。また生殖補助医療の対象は不妊夫婦に限定し、事実婚や同性カップルは対象外。ただ、公布5年後に対象範囲を再検討するとしている。
同性カップルについて言えば、第三者の精子提供で子供をもうけたり、同性カップル(女性)が性別変更前の凍結精子で生まれた子供の認知を求めて提訴する事例も起きている。
こうした生殖補助医療の進歩とニーズの高まりは夫婦・親子の関係の土台を崩しかねない。不妊夫婦に限定している対象範囲を広げるような流れにならないことを願う。
(光)