ウクライナ危機勃発、楽しめる春はいつ来るのか
5日、関東地方に春一番が吹いた。立春から春分の間に吹く、風速8㍍以上の南風のことだが、昨年は観測史上一番早い2月4日に吹いたというから、29日も遅かったわけだ。
ちょうど(二十四節気の)啓蟄(けいちつ)と重なったが、残念ながら、春の陽気に誘われて土から出てきた蟄(虫)には出くわさなかった。とはいえ、つい先日までの寒い日々が嘘のように気温が上がり、道路沿いの木々や庭の植木などを眺めると、陽(ひ)当たりのいい場所の桜はもう蕾(つぼみ)が開き、椿(つばき)の生垣にも幾つか花が咲いて、木蓮(もくれん)の蕾もややほころびかけている。
季節は確実に春に移りつつあるのだ。ただ、春は直線的にやって来るのではなく、三寒四温と言われるように、数日間の寒い日と暖かい日が交互に訪れながら、徐々に暖かさが増してくる。
高校時代、戦時中に中国東北地方に出征した老先生から、現地の猛烈な寒さとやや寒さが和らぐ三寒四温の話を聞いたことがある。三寒四温は本来、そんな中国東北地方などの冬の気候のことを言うのだそうだが、筆者の肌感覚では、春先こそが三寒四温にぴったりくる。
春先のもう一つの風物詩と言えば、女の子の節句と言われる3月3日の雛(ひな)祭りだろう。本来は旧暦だから4月上旬に当たり、これも春先とは距離がある。しかし、旧暦が使われなくなった現在では、やはり、春の訪れを象徴する行事といえる。
かつてこの日は、国立大一期校の入試が始まる日だった。全国の高校3年生や浪人生はこの日を目指して辛苦を重ねた。3月を目前にしてクラスの女子生徒が、「あっ、3日って雛祭りなんだ。忘れてた」と言っていたことが妙に記憶に残っている。
一昨年来のコロナ禍のため、自然の春は巡ってきても、心から浮かれた気分になれない。今年はさらに、ロシアのウクライナ侵略が加わった。心から楽しめる春はいつごろやって来るのだろうか。
(武)