「自公」対「保革共闘」、離島で広がる新対立構図

沖縄県石垣市長選、20日告示・27日投開票

 来年度中にも陸上自衛隊が配備される沖縄県石垣市で、任期満了に伴う市長選が27日に投開票される。4選を目指し自公が推す中山義隆氏と元保守系市議の砥板(といた)芳行氏の一騎打ちとなることが確実だ。昨年来、沖縄では、保守対保革共闘の争いが選挙の潮流になりつつある。(沖縄支局・豊田 剛)


連敗中の石垣市の革新陣営、保革共闘に活路

「自公」対「保革共闘」、離島で広がる新対立構図

昨年完成したばかりの石垣新市庁舎=沖縄県石垣市真栄里(豊田剛撮影)

 石垣市の革新陣営は、中山氏が初当選した2010年3月の市長選以降、連敗を喫している。国政選挙でも保守系候補の得票が常に上回っている。従来の「保守対革新」の構図では市政奪還は難しいと分析。保革共闘に活路を見いだし、中山市政に反発する保守層を取り込める人選を進めてきた。

 18年の前回市長選では革新系元市議のほか、砂川利勝氏が県議を辞して保守を割る形で出馬。三つ巴のすえ完敗した。その反省から、野党市議団が最初に白羽の矢を立てたのは知念辰憲氏だ。前期まで市議会議長を務め、中山市政を支えてきた1人で、前回市長選では選対本部長を務めた。革新系野党市議団や砂川氏の元後援会組織など、保革を超えた4団体が昨年12月、出馬要請。「現市政を変える」という一点で結集したが、知念氏は家族の理解が得られず要請を断った。

 反市長派が保革共闘のモデルとしているのが、同じ先島地方の宮古島市と与那国町だ。昨年1月の宮古島市長選では元自民県議の座喜味一幸氏が、4選を目指した保守系現職を破って初当選した。また、与那国町では同年8月、保革相乗りで支援を受けた元町議会議長の糸数健一氏が5期目を目指した保守系の外間守吉氏に競り勝った。

 双方に共通するのは米軍基地がない離島地域という点だ。翁長雄志元知事が主導した「オール沖縄」と違い、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設や米軍機オスプレイ配備反対は政策に盛り込んでいない。

元保守系市議の砥板芳行氏、自衛隊配備を市民に問う

「自公」対「保革共闘」、離島で広がる新対立構図

公開討論会の後、硬く手を握る砥板氏(左)と中山氏=4日、石垣市民会館(YouTubeより)

 知念氏が辞退すると、砥板氏がすぐに出馬を表明した。砥板氏も知念氏と同様、中山氏を支えてきた保守系議員。石垣島への自衛隊配備を推進し、中国の力による現状変更には強く反対してきた。

 砥板氏に変化があったのは昨年9月の議会だ。新市庁舎の建設をめぐり市政を追及し、昨年12月に与党会派を離脱した。砥板氏は、新市庁舎の赤瓦に県産のものが使われていないことは契約違反だと指摘する。この問題で石垣市議会は7日、調査特別委員会(百条委員会)を開き、中山氏を証人喚問した。中山氏は「沖縄本島の業者に製造を打診したが断られたため、やむなく本土の会社に発注した」と説明したが、野党は納得せず、15日に再び証人喚問した。

 与党の友寄永三市議は、「普通に考えれば与党を離れるほどの問題ではない。告示直前までに百条委員会を開催することは選挙戦を有利に働かせようとする意図的なもの」と批判。ほかの与党系市議も「砥板氏は『議会・市民軽視の独善的な市政運営』というが、何がそれに当たるのか説明できていない」と述べた。

 砥板氏は1月26日の出馬会見で、陸上自衛隊配備計画の賛否を問う住民投票を「早い時期に実施できるよう取り組んでいきたい」と述べた。次呂久成崇(じろくまさたか)県議は「市政を刷新するため保守革新というイデオロギーを超えて結集した。丁寧に経緯を説明し、対話を重ねれば必ず一つにまとまる」と保革共闘の成功に自信を示した。

 ただ、一枚岩とは言えない。革新系議員の1人は早々と不支持を表明。前回選挙で砂川氏を推した市議会中立会派の箕底用一氏は出馬の意欲を見せたものの、今回は中山氏の支援に回ることになった。

 砥板氏は長期にわたり八重山防衛協会の事務局長を務めた。同会は9日、砥板氏を信義違反で除名処分にしたと発表。同時に、砥板氏が管理していた会の口座から使途不明な支出があったことを明らかにした。中山氏陣営はこれらの“敵失”にも気を緩めず、保革共闘による票の上積みを警戒している。

4選目指す中山義隆氏、コロナ禍の経済立て直す

 中山氏は初当選した10年の市長選で、当時5期目を目指した大浜長照氏の長期政権を批判して当選した。砥板陣営は、これを逆手にとって中山氏の多選批判を行う作戦だ。

 中山氏は1月28日の記者会見で、4期目の挑戦について「市民に恩返しできる4年間になる」と述べた。また、4日に行われた公開討論会で「3期目の2年間は新型コロナウイルスの対応に終われた」とし、やりたいことは道半ばで4期目を集大成としたい、批判は当たらないと反論。「コロナ禍で危機的な状況に陥った経済を立て直す」と誓った。