日本最古の蒸留酒「泡盛」、無形文化遺産登録へ


沖縄発のコラム:美ら風(ちゅらかじ)

 文化庁はこのほど、日本酒、焼酎、沖縄の泡盛などの伝統的酒造り技術を国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産の候補に提案することを決めた。3月末に提案書をユネスコに提出し、2024年の政府間委員会で審議される見通しだ。

 無形文化遺産への登録を目指す日本独自の伝統的な酒造り技術について、文化庁は、米や麦の麹を使った共通の製法でありながらも、各地の気候風土に応じて発展し、多様な酒が造られていると評価している。

 酒そのものも「社会的慣習や儀式、祭礼行事に深く根ざしている」として、無形文化遺産に提案することが適切だと認めた。

 実際、沖縄でも泡盛は各地に伝わる祭祀(さいし)や正月や盆など年中行事でも欠かせない。身近な沖縄の文化の一つだ。

 泡盛は日本最古の蒸留酒とされ、琉球国時代から受け継がれてきた。タイ米を原料に黒麹菌を使って造られるのが特長だ。

 泡盛は年月が経(た)つと「古酒」となり、味がまろやかになる。老舗の泡盛メーカーでは工場見学ができる所が多いが、若い酒をつぎ足して熟成させる「仕次ぎ」の技術には感心させられる。一方、年数が若い泡盛は辛口でツーンとした強い香りがあり、若者に敬遠される傾向にある。

 沖縄県酒造組合によると、20年の泡盛総出荷量(アルコール度数30度換算)は前年比13・7%減で、16年連続の減少となった。21年度はコロナ禍で減少幅がさらに大きくなる見通しだ。

 ユネスコ無形文化遺産に登録されれば、酒造所を巡る観光や海外輸出の促進につながると業界は期待する。だがその前に、県民がその価値を再認識できるかどうかが問われている気がする。

(T)