漫画から方言ブームが到来する日は案外近い?
沖縄発のコラム:美ら風(ちゅらかじ)
「沖縄で好きになった子が方言すぎてツラすぎる」
ユニークなタイトルの漫画が沖縄で大人気だ。県外から沖縄に転入してきた主人公の男子高校生が、気に入った女の子が話すしまくとぅば(沖縄方言)が理解できずに振り回されるラブコメディー。
作者は大阪府出身の漫画家、空えぐみさん。3年前に沖縄に移住したが、沖縄の文化や風習、言葉、県民性など、すべてが新鮮に感じられ、それをそのまま漫画に描いている。祖父が沖縄出身で、自身のルーツに関心を持つようになったというエピソードには納得する。
昨年4月には第7回沖縄書店大賞の準大賞にも輝いた。1月には第4巻が発売され、各書店で平積みされ、よく売れている。
さっそく読んでみたが、「うちあたい」(心当たり)することが幾つもあった。沖縄に来てすぐに戸惑ったのは、「ひざまずく」という言葉だった。正座を意味するとは知らなかった。
また、県外の人が勘違いするエピソードとして、定番なのが「行こうね」という表現だ。話す本人だけが行くのであって、話し相手を誘っているのではない。作者の空さんは「〇〇しようね」問題として解説を加えている。
また、しまくとぅばと言っても島や地域によって異なり、隣集落ですら意味が通じないことがあることを指摘している部分は共感できる。
この漫画がヒットしたことで、沖縄県のしまくとぅば普及継承事業に活用されるに至っている。昨年11月から1月末にかけて県内各地を巡回し、「しまくとぅばマンガ展」で展示され、多くの若者が来場した。
日本各地で若い世代の方言離れに歯止めがかからない中、漫画を通じて方言に親しみを深めていく取り組みは面白い。方言ブームが到来する日は案外近いのかもしれない。
(T)