【2021年回顧】軍政復活 世界各地でクーデター


ミャンマーもアフリカも

 新型コロナウイルス禍に覆われた2021年は、世界各地でクーデターが続いた年でもあった。21世紀に入って下火になっていた「軍政」が息を吹き返した。

クーデターで捕らえられたままのミャンマーのアウンサンスーチー国家顧問=2016年2月、ネピドー(AFP時事)

クーデターで捕らえられたままのミャンマーのアウンサンスーチー国家顧問=2016年2月、ネピドー(AFP時事)

◇フラッシュモブ

 ミャンマーでは2月、軍が全権掌握を宣言し、アウンサンスーチー国家顧問やウィンミン大統領らを連行した。20年11月の総選挙で、国軍系政党の不人気に衝撃を受け、軍の利権を失うまいと反乱に打って出たとみられている。

 国民は各地で大規模なデモを続けたが、激しい弾圧で軍は応じた。デモは「フラッシュモブ」と呼ばれる形態で今も続く。デモ隊が通りや広場に突然集まり短時間、抗議を叫んで雲隠れする。しかし、ヤンゴンでは5日、待ち伏せていた軍の車が「フラッシュモブ」に突進し死傷者が出た。

 東南アジア諸国連合(ASEAN)では突出して中国寄りのカンボジアは7日、フン・セン首相が年明けの1月7、8の両日にミャンマーを訪問すると明らかにした。カンボジアのソコン外相は「ウィンウィンの解決」に向けミャンマーを支援すると語った。「ウィンウィン(相互利益)」は習近平政権が好む言葉だ。

◇唯一の成功没落

 アフリカ・サハラ砂漠の国マリでは5月、暫定政府の大統領と首相が軍に連れ去られた。20年8月に続く再度のクーデターだが、二つの反乱の首謀者ゴイタ大佐が6月、暫定大統領に就いた。

 ゴイタ氏は12月、各種団体を集め「民政移管のための会議」を開催。「国家の状況を断固として精査し、そこから教訓を引き出せ」と演説した。一方で、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」と契約し政権の護衛を任せようと画策中とされ、旧宗主国フランスは公然と非難している。

2021年にクーデターが起こった国々

 

 サハラ砂漠の北に位置するチュニジアでも7月、サイード大統領が首相らを解任し、国会を停止すると発表した。議会第1党は「クーデターだ」と非難し、大統領派は「違う」と反論する。ただ、国会は軍に包囲され、反大統領派は軍事法廷で裁かれていると人権団体は批判する。

 チュニジアは11年の「アラブの春」で民主化の唯一の成功例と目されたが、見る影もない。サイード氏は13日、「来年12月17日に総選挙を行う」と演説した。少なくとも1年はこのまま居座ると宣言した格好だ。

◇行き詰まり逆流

2021年のクーデターとその特徴

 

 サハラ砂漠の西に位置するギニアでは9月、強権で知られたコンデ大統領が、肝煎りの親衛隊に裏切られ拘束された。首謀者で元傭兵(ようへい)のドゥンブヤ大佐が10月、暫定大統領に就任した。軍政は11月、コンデ氏が首都コナクリ郊外の妻の実家にいると公表し「地位にふさわしい処遇を提供し続ける」と述べている。

 19年にバシル独裁政権を倒したスーダンも10月、クーデターでハムドク首相が連行された。しかし、抗議は収まらず、行き詰まった軍政は11月、ハムドク氏の復職を認め、世界的にも珍しい逆流が起きた。

 クーデターの背景はそれぞれだが、ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は6日、コロナ禍にもかかわらず各国の兵器産業の20年の収益は全く落ちていないと発表した。紛争もテロもめっきり減ったコロナ禍の世界で、武器だけは着々と備蓄されている。

(時事)