【社説】防衛費過去最大 隙のない体制の整備を急げ


F-15イーグル

 2022年度の予算案が閣議決定され、防衛費は前年度比1・1%増の5兆4005億円が計上された。過去最大の額で10年連続の増加となった。

補正と合わせ6・1兆円

 内訳を見ると、強まる中国の脅威に対処するための事業が中心で、中国、台湾に近い南西諸島の防衛体制強化を目的に、石垣島(沖縄県)に対艦・対空ミサイル部隊を新設する予算や、島嶼部に物資や人員を運ぶ輸送艦2隻の取得費102億円が盛り込まれた。

 このほか、米軍空母艦載機の離着陸訓練(FCLP)の移転先候補地の馬毛島(鹿児島県)に自衛隊基地を整備する経費3183億円が初めて計上された。ステルス戦闘機F35A8機、短距離離陸・垂直着陸が可能なF35B4機の購入費や「いずも」型護衛艦を事実上空母化するための改修費も積まれた。

 研究開発費は37・6%増の2911億円で、次期戦闘機の開発に858億円、既存のミサイル防衛システムでは対応困難な極超音速兵器などの迎撃を目指す電磁砲「レールガン」の研究に65億円、敵基地攻撃能力の確保を視野に入れた長射程の国産地対艦ミサイル開発に393億円がそれぞれ計上された。

 宇宙分野では、人工衛星に対する電磁妨害状況を把握する「第2宇宙作戦隊」(仮称)新設の経費などが含まれている。このほか、同盟強靭(きょうじん)化のための予算として、在日米軍駐留経費の日本側負担に2056億円が計上された。

 防衛費増額には批判の声もあるが、安全保障政策は周辺諸国の動静や国際情勢に柔軟に対応する必要がある。防衛白書に拠(よ)れば、冷戦後、中国は14倍、ロシアは4・6倍、韓国も3・9倍と周辺諸国が大幅に防衛費を増やし軍事力強化を進める中、日本は1・8倍にとどまっている。しかもわが国の防衛費は、隊員の給与や食費など義務的な経費が全体の8割を占め、最新の装備品購入に充てられる予算は乏しいのが実情だ。

 そのため防衛費については、今年度補正予算(7738億円)と来年度予算案を一体化させて「防衛力強化加速パッケージ」と名付け、計6兆1000億円を超える予算を基に防衛力整備の前倒し・加速化を目指している。岸田政権は来年末までに国家安全保障戦略や中期防衛力整備計画を改定し防衛力を強化する方針を示しており、自民党も10月の衆院選で防衛費に関して「国内総生産(GDP)比2%以上も念頭に増額を目指す」との公約を打ち出している。

 急速に高まりを見せる中国や北朝鮮、さらにロシアの脅威に対処し、また台湾有事に備えるには、敵基地攻撃能力の保持など防衛政策の見直しを進め、抑止力を強化するとともに、高い即応性と機動性を備えた隙のない防衛体制の整備を急がねばならない。

国民の理解得る努力を

 そのためには継続的に防衛費を増額することがどうしても必要となる。増額が欠かせない事情を国民に分かりやすく説明し理解と支持を得るとともに、歳出の効率・合理化に取り組み、無駄を排する努力が政府に求められている。