沖縄 キャンプ・ハンセンで250人超クラスター
沖縄県中部の金武町にある米海兵隊基地キャンプ・ハンセンで250人を超える新型コロナウイルスの大規模クラスター(感染者集団)が発生している。本島北部でもクラスターが発生し、直近1週間(25日現在)の人口10万人当たりの新規感染者数は7・34人で全国平均の6倍以上だ。予算折衝で上京する機会が多かった玉城デニー知事だが、感染に歯止めをかけるためにも強いリーダーシップが求められる。(沖縄支局・豊田 剛)
異動のタイミングと重なる、今後も感染拡大の懸念
今月15日以降、大規模な集団感染が発生しているキャンプ・ハンセンでは、基地の従業員やその家族など県民にも感染も広がっている。
なぜ感染が急拡大したのか。米海兵隊には、半年ごとに部隊を異動する部隊展開計画があり、11月から12月初旬にかけて多くの兵士が沖縄へ移動してきたことと関係がある。県の新型コロナウイルス対策本部参与の高山義浩医師は、「異動のタイミングと米本国のオミクロン株の流行が重なった」と分析。「ハンセンの集団感染は、オミクロン株によるものであろう」と推測している。
海兵隊は、米国から移動した部隊が出入国の際にPCR検査を受けていないことを認めている。玉城知事は「米軍は県民と接触する機会がある。大きな穴が空いていたのだから、しっかりPCR検査をすることが大前提になる」と苦言。ハンセンの全ての軍人や軍属に対し外出禁止の措置を取るよう求めている。
マスク着用に慣れていない欧米社会では、マスクに対する抵抗感がいまだに強い。緊急事態宣言の発令中は基地内での着用が義務付けられ、守られていた。ハンセンで働く基地従業員の男性によると、最近まで、マスクを着けている人はほとんど誰もいなかったという。11月下旬から12月にかけて感謝祭やクリスマスなど大人数でのパーティーやイベントが多く実施されており、「今後も感染が広がる懸念はある」と話した。
海兵隊は現在、基地内のレストランでの店内飲食を禁じ、テークアウトのみに制限している。ただ、基地外での飲食は許可されたままだ。このため、基地の外へ兵士たちが会食目的で出ていく姿が目立つ。
基地近くの歓楽街にある飲食店の男性店員は、「年末の時期は書き入れ時で、1人でも多くの客に来てもらいたい。ただ、米軍でちゃんと感染対策を徹底してほしい」と話した。
県北部に「感染拡大注意報」発令、医療逼迫の恐れも
県は21日、新型コロナの新規感染者数が一定水準を超えたとして、沖縄本島北部の北部保健所管内の5町村に「感染拡大注意報」を出した。その中でも、本部町では感染が急拡大している。平良武康町長は、12月に入り町内で約20人の感染者が確認され、飲酒を伴う会食などで断続的に感染者が出ていると報告した。基地とは無関係の市中感染も確認されている。
北部では26日現在、34床ある新型コロナ対応の病床のうち33床が使用中。25日時点で感染力の高いオミクロン株感染者は10人おり、濃厚接触者は60人を超える。国の指針ではオミクロン株感染者は入院することになっているが、県のコロナ対策専門家会議(座長・藤田次郎琉球大学大学院教授)は「医療を逼迫(ひっぱく)させる恐れがある」として、無症状や軽症の感染者に対しては宿泊施設での療養を認めるよう県に提言した。
第6波に備え早急な対策、住民に無料PCR検査開始
県では今年5月頃から感染が急拡大し、緊急事態宣言の発出期間が全国最長の4カ月となった。その教訓を踏まえ、第6波に備えて早めに手を打っている。
米軍が集団感染を発表した翌日の18日からキャンプ・ハンセンの基地従業員を対象とした無料PCR検査を開始。22日からは、金武町の飲食店従業員やタクシー運転手など住民まで対象を拡大した。また、本部町を中心に沖縄本島北部で感染拡大していることを受け、本部町と名護市でも無料PCR検査を行った。
専門家会議は、このまま拡大が続けば3週間後には1日当たりの感染者は832人に達するという悲観的ともいえる試算を示した。年末年始は、県民の移動も活発になり、里帰りなどで高齢者との交流も増える。帰省や大人数の会合自粛を求める知事の強いメッセージが必要だ。







