【社説】21年の世界 警戒要する中露の連携強化


習近平国家主席(左)とプーチン大統領

 今年は、人権問題や台湾情勢などをめぐって米国と中国との対立が一段と激化した一年だった。1月に就任したバイデン米大統領は、中国を「最も深刻な競争相手」と位置付け、日米、オーストラリア、インド4カ国の連携枠組み(クアッド)の首脳会談や、米英豪の安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」創設など同盟国や友好国の結集を図り、中国への対抗を前面に打ち出した。

 懸念残るバイデン政権

 ただ対中戦略に資源を集中させるため、米軍のアフガニスタン撤退を急いだことは失敗だった。イスラム主義組織タリバンの実権掌握を許す結果となり、アフガンが再びテロの温床となることが危惧される。またオーカス創設の際、豪州がフランスと合意したディーゼル潜水艦建造計画を撤回し、米英両国が豪州の原子力潜水艦建造への協力を表明したことで、米仏関係の悪化を招いたことも軽率だったと言わざるを得ない。

 バイデン氏は「新冷戦は望んでいない」と繰り返し述べている。中国に毅然(きぜん)とした姿勢を貫けるか懸念が残る。

 中国国内の人権状況は悪化している。新疆ウイグル自治区では100万人以上のウイグル族が拘束され、ジェノサイド(集団虐殺)が行われている。香港の立法会(議会)選では中国主導の選挙制度変更で民主派が排除されるなど、香港の高度な自治を保障する「一国二制度」が骨抜きにされている。

 こうした状況を受け、米国のほか英国、豪州、カナダは来年2月の北京冬季五輪に政府関係者を派遣しない「外交ボイコット」を表明。日本も同様の措置を取ることを決めた。五輪は平和の祭典であり、中国に開催する資格がないのは明白だ。バイデン氏はボイコットの動きをさらに広げていく必要がある。

 中国の習近平国家主席は台湾統一を「歴史的任務」と位置付け、武力統一を排除しない姿勢を示している。今年3月には米軍高官が、6年以内に中国が台湾を攻撃する恐れがあると警告するなど、情勢は緊迫の度を増している。

 中国とロシアの連携強化も要警戒だ。習氏とロシアのプーチン大統領は6月のオンライン会談で、7月で締結20年の中露善隣友好協力条約を延長することで合意した。この条約は、相手国の主権、安全に危害を及ぼす組織を認めず、ロシアが台湾独立に反対することなどをうたっている。

 ロシアはウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟を阻止するため、ウクライナとの国境付近に10万人規模の軍部隊を集結させている。中露が台湾とウクライナへの連続侵攻や同時侵攻を仕掛けてくる恐れも否定できない。

 台湾とウクライナを守れ

 バイデン氏は今月主宰した「民主主義サミット」で、中露を念頭に「専制主義国家は、世界中の人々の心の中で燃える自由の炎を消すことは決してできない」と強調した。危機にさらされている台湾とウクライナの民主主義を守り、圧政に苦しむ世界中の人々を解放することが米国をはじめとする民主主義国家の使命である。