【上昇気流】北海道の礼文島は、稚内市から海を隔てた西60㌔のところにある離島


礼文島

 北海道の礼文島は、稚内市から海を隔てた西60㌔のところにある離島。日本海にある最北の島で、南東に利尻島が隣接する。春から夏に約300種類もの高山植物が咲くので「花の浮島」と呼ばれている。

 特に南部の西海岸には多様な植物が生育し、固有種も多い。それらの高山植物群が国の天然記念物に指定されることになった。赤いレブンソウ、純白のレブンアツモリソウ、黄金色のレブンキンバイソウは、ここでしか見ることができない花。

 丘陵性の地形で、本州のアルプスの高嶺にある植物が標高0㍍のところで見られるのだ。この島で生まれ育った画家、笹山峻弘(1946~2013)は、島の自然を描いた絵を数多く残している。

 代表作は礼文島天龍寺の内陣格天井に描かれた「北方四季変相図」。草花と海の魚介類で構成した。友人でフランス文学者の村松定史さんは、これに「北方曼荼羅に寄す」という詩をささげた。

 「そこは天地の境をなすところ/海原に浮かぶ園生(そのう)/光が咲き/匂いが満ち/海坂(うなさか)の果てより届く/星の便りを聞き/雲のつぶやきのふるところ/きばなのあまなを摘草する/童子(わらわ)らの/やなぎのまいと遊戯するくに」。

 笹山は世界各地を旅したが、いつも故郷の島に帰ってきた。01年、地元の中学校を再訪してこう語った。「どこに生きてもどの道に進んでも、今の自分がふる里の風に向かって恥ずかしくないように生きたいとおもっています」