ナイル上流のダム建設めぐり対立
電力確保目指すエチオピア
水源維持へ強硬なエジプト
スーダンは「技術面で合意」
エチオピアがナイル川上流に建設中の「大エチオピア・ルネサンス・ダム」をめぐって、水源の大部分をナイル川に頼る下流のエジプトとの対立が強まっている。
スーダンは技術的問題をめぐってはほぼ溝は埋まったと主張するが、エジプトは、エチオピアが一方的に建設を進めれば、「あらゆる手段を取る」と主張、強硬な姿勢を崩していない。
(本田隆文)
ルネサンス・ダムは2011年に建設が開始され、すでに7割が完成。総工費は約40億㌦(約4300億円)でアフリカ最大の水力発電所となる。エチオピア当局は雨期を迎える来月にも貯水を開始したい意向で、サレシ水資源相は昨年9月、20年12月にも発電を開始する予定であることを明らかにしている。エチオピア政府は、経済発展に伴い増加する電力需要を賄うために、早期に本格操業を開始することを目指している。
ダムの建設がナイル川の水量自体に影響を及ぼすことはないものの、安定した水量の確保を必要とするエジプト、スーダンは短期間での貯水に強く反対している。特に水資源の90%をナイル川に頼るエジプトにとっては、「国家の存亡にも関わる一大事」だ。そのため、水量の影響を最小限に抑えるため、長期間かけて貯水することをエチオピアに求めている。
エチオピアは6年で満水にする計画とされている。しかし、1月に行われた3カ国による交渉でエジプトは12年から21年を求めており、サレシ氏は「全く受け入れられない」と強く反発していた。
現状ではダムができれば、エチオピアの一存で下流の水量を調整することが可能になる。エジプト、スーダンにとっては、生命線を押さえられることになり、まさに死活問題だ。
3カ国は今月9~11日にかけてオンラインで交渉を行ったが、合意に至らないまま終了、協議は継続されている。エジプトは、エチオピアの「強硬な態度」が交渉を行き詰まらせていると激しく非難した。
一方、スーダンのアッバス潅漑(かんがい)相は15日、貯水、運用に関する技術面に関して「95%」合意したと述べたものの、エジプトが重視している貯水に何年かけるかは確定されていないという。
エチオピアの水・潅漑・エネルギー省は、貯水の第1段階、川の水量などで合意したと発表した。しかし、エジプト政府報道官はカイロで記者団に対し、全く進展はなかったと話すなど、双方の言い分は大きく食い違っている。
交渉は10年近くに及んでいる。前回の交渉は2月に米国の仲介でワシントンで行われたものの、合意が得られないまま終了、エジプトとエチオピアの間で、激しい非難の応酬が繰り広げられた。米国が作成した合意案をエチオピアが「エジプト寄り」と拒否、エジプト外務省が「国民の利益を守るためあらゆる手段を取る」と表明するなど、両国関係は緊張した。
英BBCによると、人口1億人を超えるエチオピアでは、経済発展の影響で深刻な電力不足に見舞われ、現在人口の65%が電力の供給を受けていない。ダムが本格稼働すれば、国内に供給した上で、さらにスーダン、南スーダン、ジブチ、ケニアなど近隣諸国にも供給することが可能になるという。
スーダンにとっては電力が得られるほかに、水量の調節が可能になるため、頻発する洪水の被害を抑制することも期待できる。
エジプトのサベイ潅漑省報道官は、「エチオピアは、10年近くにわたる交渉の中で交わされたすべての合意を破壊しようとしている」と非難、さらにエチオピアは「法的拘束力のある紛争解決機構」を盛り込むことにも反対したと主張している。

とエジプトのシシ大統領(2019年10月24日、ロシア・ソチで、エジプト大統領府提供・時事)-300x144.jpg)




