沖縄本島北部地域の基幹病院の整備実現を 名護市

任期1期目の折り返し点迎えた 渡具知武豊・名護市長に聞く

沖縄本島北部地域の基幹病院の整備実現を

渡具知武豊・名護市長

 名護市辺野古では、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の代替施設建設のための埋め立て工事が進んでいる一方、過度な反対運動に地元住民は悩まされている。また、県立北部病院(名護市)の診療休止や診療制限による沖縄本島北部地域の医療危機が指摘されて10年以上が経過したが、県の対応の遅さが目立つ。今月、任期1期目の折り返し点を迎えた名護市の渡具知武豊市長に、公約の達成度、市が抱える課題や今後の見通しについて尋ねた。(書面による回答)(沖縄支局・豊田 剛)


保育・こども医療など無償化、反基地活動に「節度」望む

 ――就任から2年が経(た)った。公約の達成度や成果は何か。

 市長に就任して、これまでの2年間では、名護市のさらなる発展のため、公約を軸にスピード感を持って取り組んできた。特に、子育て支援の公約だ。学校給食費、保育料、こども医療費の無償化を実現できたことが大きい。給付型奨学金制度も来年度からスタートする。子育て支援・教育分野では一定の成果が出せたと思っている。

沖縄本島北部地域の基幹病院の整備実現を

今年1月に落成した名護市営球場「タピックスタジアム名護」

 また、スポーツコンベンションの推進にも力を入れてきた。名護市営球場は今年1月、「タピックスタジアム名護」として無事に落成式を迎え、日本ハムファイターズの春季キャンプが再開された。21世紀の森公園では、今年度からサッカー場とラグビー場の整備に着手した。現在1面しかないグラウンドが2面になり、芝の質も飛躍的に向上する。市民のスポーツ活動の充実とともに、プロチームの合宿の誘致など、経済効果も期待できる。市営球場とともに、スポーツコンベンションの起爆剤として期待している。

 ――どのような課題があるか。

 新たな課題も見えてきた。まず、市民生活に不可欠な一般廃棄物処理施設や給食センターなどの大型施設の整備をどうするか。将来的には市民会館や市庁舎も老朽化対策を検討しなければならない。こうした大型施設は、財源の確保が最大の課題となる。

 一般廃棄物処理施設については、これまで国に対して要請活動を行ってきたところであり、高補助率の補助金の活用について検討している。

 ――北部病院と北部地区医師会病院を統合する北部基幹病院の計画が急務だが、現状はどうか。

 北部基幹病院の整備については、これまで県から提出された合意書案について、修正案や質問を提示するなど、合意に向けた協議を進め、2月4日、県案に対し北部12市町村長が合意した。また、13日には基幹病院の整備を求める意見書案を知事に対して手渡し、「基本的な枠組みに関する合意書」の早急な締結を求めたところだ。

 基幹病院の実現のためには、県や医師会だけでなく、国も含めて、関係者がよく連携していく必要があり、議会への説明も大変重要となってくる。基幹病院設立に向け、引き続き北部12市町村が一つになって、協議を続ける。

 ――米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への代替施設建設についてどう考えるか。

 普天間飛行場代替施設建設の問題に関しては、その意義も含めて国と県が係争中であると理解しており、言及する立場にはないことをご理解いただきたい。

 ――キャンプ・シュワブのゲート前や辺野古漁港前で行われている不法占拠・違法抗議活動が辺野古区民の生活を脅かすものとなっており、区民からは撤去要請があるが、どう対応するか。

 キャンプ・シュワブゲート前における活動については、道路管理者である北部国道事務所、交通の取り締まりを所管する警察において適切に判断し、対応されているものと考えている。また、平成27年に辺野古区から「ゲート前構築物(テント)の撤去・違法駐車の取り締まり」について市宛に要請があった際には、その旨を北部国道事務所および名護警察署に文書で伝えた。

 辺野古漁港に隣接する護岸に設置されたテントについては、撤去を求めている辺野古区の住民がいることを承知している。座り込みをする人やテントの撤去を求める人など、双方の主張がぶつかる事案については、中立の立場で対応するのが市の基本姿勢であり、双方の意見を聞きながら話し合いの機会を設けるなど対応したいと考えている。

 いずれにしても、憲法に定められた表現の自由との均衡を鑑みて、基地反対における諸活動については、辺野古区民や国道329号の利用者などに配慮し、節度ある行動を心掛けていただきたいと考えている。

 ――辺野古区民にとっては下水道整備が念願だが整備の見通しは。

 辺野古区における下水道整備については、一括交付金での事業実施を目指し申請等を進めており、令和2年度から、下水道整備に係る設計業務等、順次整備を進めていく予定だ。


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渡具知 武豊 とぐち・たけとよ

 1961年、沖縄県名護市生まれ。第一経済大学(現日本経済大学)卒。市商工会青年部副部長を経て、98年に名護市議選に初当選。5期連続当選を果たす。18年、自民、公明、維新の推薦で名護市長選に出馬し、現職の稲嶺進氏を下して初当選した。北部広域市町村圏事務組合理事長を務める。