自然の中で余暇と仕事を 大月市市長 小林信保氏


山梨県大月市市長 小林信保氏

 東京に近いながらも豊かな自然に恵まれた山梨県大月市は近さと自然を生かしたグリーンワーケーションを打ち出している。複数の職業を持つ「複業人材」も登用している。実際に都会から移り住んだ若者たちが地域の魅力を発信している様子などを小林信保市長に聞いた。
(聞き手=岩崎 哲)

コロナ後見据え グリーンワーケーション推進

大月市が掲げるグリーンワーケーションとは。

山梨県大月市市長 小林信保氏

 こばやし・のぶやす 昭和40年山梨県大月市生まれ。同63年3月法政大学工学部卒業後、興国ハウジング株式会社入社。平成2年水下ベニヤ商会入社、同16年大月青年会議所理事長。同23年から大月市議会議員(2期)、令和元年8月第18代大月市長就任。

 ポストコロナ社会を見据えて、地方への移住や自然の中での生活が見直されている。これは緑(自然)の中で余暇と仕事どちらもできる環境を提供することだ。大月市は東京から鉄道で1時間の立地にあり、交通のハブ。2地域居住も可能で、東京からこれほど近くて、かつ自然が豊かという条件はそれほどない。

受け皿となる具体的な施設は。

 大月駅近くにある元教員住宅をリノベーションして拠点にする。地方創生の核となる施設にしたい。最初から定住というのはハードルが高いので、東京と大月の行き来ができるというのが第一歩。お試し移住のような格好で進めていきたい。これは「複業人材」とも関連する。

「複」の文字を当てているのは。

 正業に対する副業ではなく、複数のという意味だ。仕事を持ちながら市のアドバイザーとして現在、7人が登録されている。「地方創生に役立ちたい」と無償で働いてもらっている。まちおこしのために広報、移住・定住、DX(デジタルトランスフォーメーション)の3分野でアドバイスしてもらっている。

地元の住民はどう関わっていくのか。

 説明会を行ったが、この地区には「大豆クラブ」というグループがあり、彼らが興味を持って、受け入れてくれる体制ができつつある。今後、何ができるか一緒に考えていく。

地域活性化の担い手として「よそ者、若者、ばか者」と言われるが。

 その通りだと思う。外からの目線、若者の力、常識にとらわれない発想は必要だと思う。基本は楽しんで仲良く話し合いができ、取り組める人たちがいることだ。

 「ローカルディスタンス」というグループが市内にいる。20代から30代の5人で、彼らはコロナ事態になる前に東京から移住してきた。「ネット環境があれば、どこでも仕事ができる」というユーチューバーやウェブデザイナーたちだ。

 最初、1人が「富士山が見えるから」と大月に空き家を買って移り住み、そこに遊びに来た仲間が「大月、いいね」ということになって、まとめて移り住んできた。「大月市をユーチューバーのまちにする」として発信している。地域の飲食店を動画で発信したり、「外飲み」という企画を商店街と行ったりしている。

 5人で始まったグループがどんどん増えて、現在は50人に膨れ上がっている。彼らに仕事を見つけてあげるのが今グループの悩みのようだ。

各自治体では地域コミュニティー再生が課題だが。

大月市

 大月市 山梨県東部に位置し、東京まで75㌔㍍。JR、中央高速、国道20号が通り、富士河口湖町へ向かう富士急行線などの分岐点に位置し、交通の要衝となっている。面積の87%が森林。人口は約2万2800人。

 大月市ではまだ地域コミュニティーがしっかり残っている。今力を入れているのは健康を意識したコミュニティーづくりだ。「健幸」をまちづくりの基本に据えた、新しい都市モデルを追求する「スマートウェルネスシティ」首長研究会に参加する。そこで健康ポイントのプログラムを作る計画だ。健康ポイントを貯(た)め、地域イベント参加でボーナスポイントが付くなどインセンティブをつけて、健康イベントへの参加を促し、健康増進、医療費削減につなげたい。

コロナ対策は。

 最初はワクチン接種を電話で受け付けたが、殺到したためつながりにくかった。途中から郵送に切り換えたところ、受け付けもスムーズに行え、希望者の把握もできた。65歳以上の希望者は7月いっぱいで終わっている。

大月市にも桃太郎伝説があるというが。

 伝説が多く残っている。10月に「桃太郎サミット2021in大月」が開かれる。各地の伝説のある自治体が集まって、地域おこしの取り組みを披露し合う予定だ。

 大月市 山梨県東部に位置し、東京まで75㌔㍍。JR、中央高速、国道20号が通り、富士河口湖町へ向かう富士急行線などの分岐点に位置し、交通の要衝となっている。面積の87%が森林。人口は約2万2800人。