防災・減災に市民力発揮 長野県上田市市長・土屋 陽一氏

地方創生・少子化対策 首長は挑む

長野県上田市市長・土屋 陽一氏

「レイライン」日本遺産に認定

長野県上田市市長・土屋 陽一氏

 つちや・よういち 昭和31年上田市生まれ。早稲田大学第一文学部卒。上田市役所勤務、平成3年から上田市議(7期)、同30年3月の市長選で初当選。

 人口約15万5千人の長野県上田市は長野市、松本市に次ぐ県内3番目の規模の都市。土屋陽一市長は地元の豊かな自然と歴史文化を守りつつ、地域の課題に「市民力」を活用していきたいと語った。(聞き手=青島孝志)

上田市の魅力から伺いたい。

 上田市の魅力は一言でいえば、豊かな自然と歴史文化だ。平成18年の合併で、市の面積も北側の菅平高原から南側の美ヶ原高原まで広くなった。市の真ん中を千曲川が流れている。聖武天皇の時代、長野県内で唯一の国分寺をこの地に建ててくださったというのは深い意味があると思う。鎌倉時代の執権北条氏ゆかりの文化遺産も多く残されており、また戦国時代に活躍した真田氏の上田城を中心とする城下町など、歴史の深い場所だ。

 昨年夏にオープンした「信州上田ふるさと先人館」は、幕末から現代にかけて、上田出身あるいは上田で活躍し、多大な業績を残した先人・偉人の生涯と業績を紹介し、市民が郷土に対する誇りや愛着を育む場にしようと設置した。

新型コロナ問題は、改めて地域の医療体制の重要性を認識させた。上田市の医療の充実に向けてどのような施策をされているか。

 長野県内の上田市が属する医療圏は、医師の数も看護師の数もそれほど多くない。そのような中で新型コロナのワクチン接種が順調に進められており、ありがたく思っている。地元の中核医療機関である信州上田医療センターも一時期、医師不足が深刻だった。だが、地元の信州大学医学部などの力を借りて改善した。引き続き、医師の確保に努め、地域医療を安定化させたいと考えている。

市長は、「市民が自主的・自発的に地域課題の克服に取り組もうとする力」を、市民力と説明されている。具体的な取り組みを教えてほしい。

 地域課題の克服は、行政だけでできるものではない。故に、市民の皆様の協力、さまざまな知恵、汗をかくことも「まちづくり」につながる大事なことと信じている。その意味で、市民の力を発揮していただく、ということで「市民力」と呼んでいる。

 最近の取り組みとしては防災・減災に対して、各地域で市民の皆様が主体的に取り組んでくださっているケースが増えている。行政に頼るだけでなく、自分たちの生命を自分たちで守っていく、という取り組みに大きな期待をし、注目しているところだ。

 上田市内には241の自治会がある。一方、一自治会で取り組めない防災や環境問題には、複数の自治会等が連携して対処する「住民自治組織」がある。現時点で11組織あり、もう少し増える予定だ。

長野県

 上田市 平成18年3月、旧上田市、丸子町、真田町、武石村が合併して現在の上田市が発足。人口は15万4993人(令和3年7月1日現在)。

上田市では映画のロケが盛んであり、また戦国時代に真田氏が築いた上田城などの歴史文化遺産も多い。観光産業の取り組みについて市長の構想は。

 日照時間が長い上田市はロケに適した気候環境にある。ロケの窓口になって対応する「フィルムコミッション」ができたおかげで映画やドラマ、CMなどの撮影が増えている。

 新しい話題としては、令和2年に日本遺産に認定された、レイライン(夏至の朝、太陽が日の出の際に地上につくる光の線)がつなぐ「太陽と大地の聖地」~龍と生きるまち信州上田・塩田平~がある。

 これは、信濃国分寺から生島足島神社、別所温泉を通るレイライン沿いに多く分布する神社仏閣や雨乞いの祭りなどに見られるさまざまな「祈りのかたち」を題材とし、降水量が少ない風土で身近な山々に宿る龍神と密接に関わってきた塩田平の人々の暮らしなどについて、ストーリーにまとめたものだ。地域おこし企業人として市に派遣されている方のアイデアなども頂きながら、こぎつけることができた。ぜひとも多くの方々に楽しんでいただきたい。

 また、上田城には現在、三つの櫓(やぐら)がある。江戸時代には七つの櫓があったようだ。残り四つの櫓を復元したいと考えていると、市民の方から匿名で10億円の寄付を頂き、感謝している。復元に向けて文化庁とも相談して進めている。櫓が復元したらぜひ、ご覧いただきたい。