「安心・子育てふるさと」目指して 長野県中野市長 湯本隆英氏
長野県中野市は、日本を代表する唱歌「故郷」を作詞した高野辰之の生誕の地。これにちなんで、「安心・子育て」「経済活性」「農業王国」「交流・人材」のふるさと実現を公約に掲げ、市長に当選した湯本隆英氏に抱負を聞いた。(聞き手=青島孝志)
後継者育成で産業守る
バーチャルキャラで市PR
市長になって半年。どのような施策を進めているか。
まず、コロナ禍の不況感があったので、自身の給与の3割カットを今年の1月から行っている。施策としては、中野市が生んだ国文学者であり、偉大な作詞家でもある高野辰之の「故郷」にちなみ、「安心・子育てふるさと」「経済活性ふるさと」「農業王国ふるさと」「交流・人材ふるさと」を柱に進めている。
「安心・子育てふるさと」の具体策は。
子育て中である小中学生の親の経済的不安を払拭し、「中野市に住んでよかった」と思えるよう、給食費の3割カットを市長就任後、直ちに開始した。これは今年度も継続。また、世帯所得400万円未満、39歳以下の新婚世帯に対し、住宅購入、家賃、新居への引越し等に対し上限30万円の補助を行っている。
少子化対策の道のりは険しいかと思う。
中野市では出生数が減少傾向にあるが、コロナによる結婚・妊娠への不安感のためか昨年度は減少幅が拡大し260人を下回った。この傾向は今年も続くだろう。昨年4月に市内北部の小学校4校を1校に、今年4月に豊田地域の小学校2校を1校に統合し、合計6校を2校として少子化を踏まえた教育環境の充実を図った。これは、公共施設の面積を2割削減し、管理費等を削減していく市の施策の推進にも一役買った。統合後の空き校舎は、市民交流型または道の駅としての「稼げる施設」へのリノベーション、もしくは民間への売却を検討している。
コロナ対策はどうか。
昨年12月23日、長野県は急速な感染の広がりを受けて「感染警戒レベル4」を発した。市民の方に3密の回避、マスクの徹底などを広報した結果、今年1月は感染者が1カ月で6人と減少し、現在も小康状態だ。ただ、長く自粛ムードが続いており、地元商店街は疲弊している。こうした市内事業者への支援のため「信州なかの未来券」を昨年度2回、総額4億5000万円分発行。これは共通券ではなく、事業者が販売する1シート5000円(1000円×5枚)の未来券を、利用者が4000円で購入してそのお店で使えるというもの。1事業者当たりの発行限度額は50万円で、中野市が25%(上限10万円分)負担する。事業者、市民からも好評であった。
「中野市」という名称普及のために、市はどんなPR作戦を立てているか。
中野市きのこ・果実消費拡大実行委員会が昨年、「信州なかの」の農産物や観光などの情報を発信するためのキャラクターを制作。市では、このキャラクターを「信州なかの」魅力発信バーチャル・ユーチューバーとし、市のPRを行っていく。キャラクターの設定は、中野市の巡り逢いの丘にある「月の兎」の形をした「巡り逢いの巨石」の化身、身長159㌢。この名前を募集したら全国から500人を超える方から応募があり、「信州なかの」ちゃんと決まった。中野市のイメージキャラクターとして、りんごやぶどうのパッケージなどに活用する予定だ。
えのき茸、ぶどう、りんごなどが全国有数の生産量を誇る中野市だが、後継者の育成は。
親と農業を営む50歳以下の方を対象に、最長3年間、年間60万円を補助する後継者育成支援事業をはじめ、後継者研修支援制度(年間48万円、最長2年)、新規参入者営農支援事業(農地・機械等取得経費の3分の1、上限100万円)、新規参入者定住支援事業(住宅取得経費の2分の1、上限200万円)、遊休荒廃農地再生支援事業(機械取得経費の3分の1、上限100万円)など後継者育成に向けて厚く広く支援を行い、中野市の主産業である農業を守っていく。