「子供第一主義」で地域に活力 富山県滑川市
富山県滑川市長 上田 昌孝氏
地方都市はどこも少子高齢化対策に知恵を巡らせている。富山県滑川(なめりかわ)市の上田昌孝市長は、「子供第一主義」を掲げて、子供が安心して育てられる環境づくりに成功し、市民の支持を得ている。(聞き手=青島 孝志)
企業誘致で財政健全化
産婦人科医確保が課題
滑川市で取り組む「子供第一主義」の事例と成果から伺いたい。
子供は未来であり、未来は子供たちに懸かっている。「子供第一主義」とは、子供だけが中心というのではなく、子供と子供の親のための第一主義。一人っ子ではなく、子供たちの明るい声が聞こえる家庭が良い。人口維持のための合計特殊出生率は2・07などと言われているが、やはり子供は3人ほどいてほしい。
実際は、家庭や経済的な事情などで断念している。それで滑川市では医療費の無料化を現在は高校生まで拡大、さらに2人目が欲しいけど諸事情でなかなか踏み出せない「第2子の壁」を突破するために、国に先駆けて第2子以降の保育料無料化を進めてきた。そのおかげで、お母さんたちが子供を保育所に預けて働き、家計が安定。また女性ならではの戦力で企業の業績に貢献でき、双方がウィンウィンの関係になっているという報告を聞いている。
そうした施策に、高齢者からの苦情は。
高齢者の方々は、今日の福祉政策におおむね満足されている。「孫たちの将来を確かなものとしてほしい」との思いは、どの方々も同じ気持ちだろう。
市内に産婦人科医がいないことが課題だ。
安心して地元で出産できる環境整備は喫緊の課題だ。私が市長になってから、地元の産婦人科医が駐在してもらうよう富山大学、金沢大学をはじめ大学病院に幾度も足を運んで頼んできた。やがて、「もうすぐ何とかなる」という返事を学長からもらっていたが、候補だった若い女医は大学の奨学金を全額返済して都会に行ってしまい、学長から頭を下げられたこともある。
市のレベルでは限界がある。産婦人科医確保という課題は、国の少子化対策と切り離すことのできないテーマなので、国や県でも真剣に取り組んでもらいたい。
コロナ禍で税収減が予想される。
私がまだ市議会議員だった平成19年度、滑川市の実質公債費比率(市の収入に対する実質的な借金の比率)は23・1%と、富山県内10市で最悪だった。財政再建を掲げて市長となり、令和元年度の実質公債費比率は7・6%と、10年間で県内2位まで改善。財政調整基金の残高は令和元年度末で21億円となった。ものづくりに関わる多くの企業が集まっており、人口1人当たりの工業製品出荷額は県内トップだ。高い教育力と安定した職場環境があるため、他市からの転入も順調だ。安心度・快適度・富裕度などを基に発表される東洋経済新報社の「住みよさランキング2020」で本市は全国812市区の中で、15位(富山県内2位)。また財政健全度ランキングでは、全国792市の中で86位(富山県内1位)と健闘している。
市政に対するポリシーは。
政治家としての信条は「大衆の真ん中に真理あり」。行政は市民のためにあり、市民が満足するサービスをどう提供するかに尽きる。
堅いイメージではなく、職員には、スマイル、スピード、親切の3Sの周知徹底を図ってきた。また、市政は私一人がマネジメントするものでもない。私がトップ・マネジメントを担当するが、中堅幹部はミドル・マネジメント、その元にロワー・マネジメントと3者が一つとなって改革改善を進めてきた。その成果が出ているのが誇りでもある。