学術と産業に力注ぎ人口増 広島県東広島市長 高垣 広徳氏

地方創生・少子化対策 首長は挑む

広島県東広島市長 高垣 広徳氏

留学生に門戸広げる広島大学

 広島県東広島市は学術と産業に力を入れて、この5年間で4000人弱、約2%の人口増を果たす活気ある市となっている。市政をリードする高垣広徳・東広島市長に、まちづくりの構想を聞いた。(聞き手=青島孝志)

広島県東広島市長 高垣広徳氏

たかがき・ひろのり 昭和28年、広島県尾道市生まれ。大阪大学卒業。広島県庁に入庁。平成26年4月、広島県副知事に就任。同30年2月に行われた東広島市長選挙に立候補し、初当選。

全国の首長は誰もが昨年、今年とコロナ禍という国難に直面されたわけだが、高垣市長は、このたびの経験からどのような教訓を持たれたか。

 どこの自治体もコロナ・パンデミックに対して、的確な対応が分からず、五里霧中だった。振り返って、リスク・マネジメントをキチンとできたのか、ということだ。

 リスク・マネジメントに関しては私自身、広島県庁で建設関係の部門で長年、担当した。また、市長になってすぐ、100年に一度といわれる平成30年7月の豪雨災害の対応と復興を指揮したが、このたびのコロナ対策においてもそうした対応が必要だったのではないか。時間の経過に従い、科学的な知見や予測を踏まえて、次の手をどう打っていくか。ややもすると日本は得意ではなかった分野のように思う。

 英国は、ワクチン接種した人たちを6万人規模のスタジアムに収容して感染状況の調査などさまざまな社会実験をしている。日本は、東京五輪をどうするか、経済対策をどうするか。常に政局を睨(にら)みながらで、政府も難しいかじ取りをされたが、後手後手という印象を国民に与えてしまったのは残念だ。合わせて、「有事」対応のリスクコミュニケーションが大事だ。自分たちはどう考えて、どうしようとしているのか、というメッセージも弱かったのではないか。

東広島市は日本人、外国人ともに増えている。この背景をどう分析しているか。また、人口面での今後の予測も伺いたい。

 5年前、平成27年の国勢調査の時は19万2907人だったが、令和2年の国勢調査では19万6755人と、2%の人口増となった。この近辺では広島市、海田町、府中町以外で軒並み、人口が減っている。

 内訳をみると、伸びた4分の1は外国人で、残りが日本人。これはわが市が1970年代から始めた広島大学を中心とする賀茂学園都市づくり、1984年の広島中央テクノポリス(高度技術集積都市)地域指定などで、学術と産業の両方に力を入れた成果だ。従って製造業関係の企業も多い。そこの技能実習生が増えている。

 広島大学も留学生に門戸を広げており、外国人が90カ国から約8000人、人口の約4%を占めているという特徴がある。

東広島市 昭和49年4月、賀茂郡西条町、志和町、高屋町、八本松町が合併し東広島市となる。平成17年2月、賀茂郡黒瀬町、河内町、豊栄町、福富町、豊田郡安芸津町を編入。

東広島市 昭和49年4月、賀茂郡西条町、志和町、高屋町、八本松町が合併し東広島市となる。平成17年2月、賀茂郡黒瀬町、河内町、豊栄町、福富町、豊田郡安芸津町を編入。

 また広島市に隣接し、新幹線やJRが通り、子育て世代を中心に山陽線沿線の人口が増えている。わが市は比較的、教育水準が高い。この地では100年前から独創教育を進めており、その当時、全国から約3000人の視察者を迎え入れていたという歴史がある。小中学の学力テストでも県下でトップクラス。こうした教育環境の良さ、働く場所が多いという強みが、人口増の要因になっているとみている。2030年にはあと5000人ぐらい増える予測だ。

高垣市長は、次の時代における新しい価値観となるキーワードとして、「SDGs」とデジタルトランスフォーメーション「DX」を挙げている。DXと市民生活との関わりについて伺いたい。

 DXは手段であって、市民の幸福度をいかに向上するのか。市民が自己実現できるよう、デジタルを通じてしっかりと支援することが肝要だ。たとえば、デジタルと通信が連携し、遠隔での教育ができるようにする。わが市も都市問題と中山間地問題の両方を抱えているが、都市では人口が増えるので新しい学校を建設し、一方の中山間地では人口減少に伴う統廃合をするため、それぞれに新たな投資が必要となる。

 これが通信技術をうまく活用し、今ある教育施設を通信インフラで結び、バーチャル中規模校を設けて、そこで学ぶことも可能だ。そうなれば、町中に出ず、豊かな自然環境の中で生活しながら、子育てできる。

 コロナの定額給付金でも人海戦術で対応した。もしデジタルで口座番号などが整備されていたら3日以内で皆さんの通帳に振り込み可能だ。少しハードルが高いが、遠隔医療ができるようになれば、都市と地方の格差が解消されよう。このように市民サービスに貢献できるDXを実現しないと一流国家といえない。東広島市がそうしたモデル的な市となれるよう頑張りたい。