うるま市長に保守系新人の中村正人氏が当選
沖縄県うるま市長選が25日、投開票され、現職の後継者で自民、公明両党が推薦する新人候補が勝利した。来秋に予定される知事選の前哨戦と位置付けられており、自公は県政奪還のきっかけとしたい考えだ。(沖縄支局・豊田 剛)
「県政のコロナ対策は人災」、赤嶺氏の支持が追い風に
無所属新人で前市議の中村正人氏(56)=自民、公明、会派おきなわ、無所属の会推薦=が2万7597票を獲得し、初当選を果たした。無所属新人で沖縄国際大名誉教授の照屋寛之氏(68)=共産、立民、社民、社大、新しい風・にぬふぁぶし推薦=を1862票差で退けた。
うるま市は沖縄県で那覇市、沖縄市に次いで人口が多く、2005年に2市2町が合併して誕生。その時以来、保守市政が続いている。
投票率は55・49%だった。前回の17年選挙より5・21ポイント下回り、うるま市誕生以来、最低となった。4年前の市長選で現職の島袋(しまぶく)俊夫市長が対立候補の山内末子氏(現県議)につけた5753票差をかなり縮められた。
とはいえ、告示前、自民党などの調査では照屋氏にリードを許していた。保守地盤で、島袋市長の後任であることから、自民は盤石な選挙としたかったが、相手陣営が動き出した2月ごろから劣勢に立たされていた。
中村氏は市議を6期22年務めたベテランだが、その議員の経歴から保守系議員の間で評価が分かれていた。
下地幹郎衆院議員率いる地域政党そうぞうに参加し、幹事長、後に維新の会の党県支部に当たる「おきなわ維新の会」幹事長を歴任した。また、前回17年の市長選では、出馬の意向を示して保守分裂が懸念されたりもした。風向きが変わったのは告示の少し前。現職の島袋氏とその前任の知念恒男氏が前面に出て応援を始めてからだ。
告示直前の15日、県内ではいち早く、津堅島で新型コロナのワクチン接種が実施されたことも追い風になったとみられる。また、告示日には赤嶺昇県議会議長が演説し、「県政のコロナ対策は人災だ。刷新されるべきは玉城県政」と玉城知事を痛烈に批判した。
会派おきなわの所属議員は赤嶺氏ら3人だけ。だが、これまで与党的立場だっただけに中村氏支援に回ったのは大きかった。
照屋氏を推すオール沖縄は連敗、玉城知事の地元で苦杯
一方、照屋氏を推す「オール沖縄」陣営は、無党派層を取り込むため、立民、共産、社民などが政党色を消して支援する戦術を取ってきた。県出身のオール沖縄の国会議員にもほとんどマイクを握らせることはなかった。うるま市には米海兵隊の主力実戦部隊があるが、米軍基地問題を話題にすることはなかった。
その代わりに争点としたのは、「市政の刷新」だ。市長の給与の半減、給食費と高校生までの医療費の無償化、返還不要な奨学金支給、飲食店などへの手厚いコロナ対策支援を主な公約に掲げたが、現実味のなさから支援が広がらなかった。
うるま市出身の玉城知事は告示の前も告示後も何度もうるま市に足を運び、演説を重ねた。照屋義実副知事も精力的に応援した。
26日、同市長選の敗北について、玉城知事は記者団を前に「私の力不足だ」と述べ、地元で存在感を示しきれなかったことに肩を落とした。
来秋の知事選に向け弾みつく自公、県政奪還へ意欲を示す
沖縄県では今年前半に行われた3市長選で、自公は2勝1敗。1月の宮古島市長選は、事実上の保守分裂となったため、オール沖縄が勝利した形になったが、2月の浦添市長選は自公の推す候補が大差で制した。
うるま市長選の結果を受け、自民県連の中川京貴会長は25日、知事選に向け「潮目が変わった。(来年前半の)名護、南城市長選も勝って、知事選に向かいたい」と県政奪還へ意欲を示した。同日行われた衆参3選挙では、候補者を擁立しなかった選挙区を含め、自民全敗が早い時間に決まった。そのため、うるま市で一矢報いた形になったことを素直に喜んだ。
一方、別の県連幹部は「票差からしてもまだまだ流れがきていないことは明らか」と気を引き締めた上で、知事選について、候補者選考に向けての動きがないことに危機感を示した。「タラレバは禁物だが」と前置きした上で、「もし基地問題が争点になっていたら違う戦いになっていた。別の候補を擁立したら勝てなかったかもしれない」と振り返った。
自民復党を要請している下地幹郎衆院議員の動向、知事選を視野に自民に接近しているという見方もある赤嶺議長らの動きを踏まえながら、自民党県連は知事選候補選びに早期着手する必要がある。







