多い地元関連本、昨年話題になった沖縄本は?
沖縄発のコラム:美ら風(ちゅらかじ)
観光客や移住者が沖縄に来て驚くのは、地元関連の本が多いことだ。沖縄の書店に行くと「郷土本・雑誌」「沖縄関係」などのコーナーが必ずある。
「県産本」という呼び方は沖縄ならではでなかろうか。県産本は、県内の出版社で発行された本を指す場合が多く、本に対する沖縄県民の思い入れの強さを感じる。
それだけに「沖縄書店大賞」という賞があるのもうなずける。今年で7回目を迎える同賞(主催・同実行委員会)がこのほど発表された。県産本に限らず、県内の書店員たちが「今、一番読んでほしい」一冊を選ぶもの。2020年に発行された新刊書を対象に県内13書店の店員118人が「沖縄部門」「小説部門」「絵本部門」でお勧めの本に投票した。
「沖縄部門」では約300点が審査の対象となった。研究者として、または、母としての自身の日常を綴った上間陽子琉球大学教育学研究科教授の初エッセイ集『海をあげる』(筑摩書房)が大賞に選ばれた。次世代に希望をつなぎたいという沖縄の今を多面的に描いたことが高く評価された。
最終ノミネート作品は3部門計16作あったが、そのうち、「沖縄部門」で異色と言える本があった。それが、沖縄大学の樋口耕太郎准教授の著書『沖縄から貧困がなくならない本当の理由』(光文社)だ。
貧困率や自殺率の高さ、家族経営の問題、若者の無関心など、沖縄県民の負の部分、急所をタブーなく突き刺すような内容。20年のノンフィクションベストセラーの堂々1位だ。主要書店では発売から1年近くずっとトップテンにランクインしているが、地元メディアが書評を扱った形跡がない。「不都合な真実」を知りたい県民とそれを知らせたくないマスコミという構図が浮き彫りになっている。
(T)