ウォーレン氏は米経済に脅威
アメリカ保守論壇 M・ティーセン
「大構造改革」呼び掛け
大多数が「景気は好調」
民主党の大統領候補選びに立候補しているエリザベス・ウォーレン上院議員は現在、三つの世論調査でトップに立ち、すぐにでもジョー・バイデン前副大統領を追い越しそうな勢いだ。これは共和党にとって素晴らしいことだ。ウォーレン氏には問題があるからだ。選挙戦で、経済は非常に好調だが、普通の米国人にはそうではないと訴えている。しかし、残念ながら普通の米国人はそうは思っていない。
◇失業率は低水準
マリスト大学の世論調査によると、「景気はあなた個人にとって好調か」との質問に対し、ほぼ3分の2が「はい」と答えた。ほぼすべての人口層で大部分が、景気は好調と感じているということだ。大卒の67%、大学教育を受けていない人々の64%が同様の答えをしている。白人の68%、非白人の61%も同じだ。あらゆる年齢層でもこれは言える。1990年代半ば以降に生まれた「Z世代」と80年代から90年代半ばまでに生まれた「ミレニアル世代」で63%、60年代初頭または半ばから70年代に生まれた「X世代」で63%、第2次世界大戦以降の生まれのベビーブーマーで63%、第2次大戦を戦い、後方から戦争を支えた「最も偉大な世代」と25年~42年頃に生まれた「沈黙の世代」で69%という具合だ。
好調でないと答えたのは、進歩主義者(59%)、民主党支持の女性(55%)、リベラルまたは非常にリベラル(55%)だけだ。つまり、ウォーレン氏が、トランプ氏は「腐敗し、不正に操作され、富裕層とコネのある人々に利益をもたらし、その他の人々の顔に泥を塗る体制の一部」と訴えても、共感してくれるのは、政治的左派の人々だけということだ。
それにはきちんした理由がある。失業率は記録的な低水準で推移し、失業者よりも雇用の方が160万人多い。仕事があるだけでなく、賃金も上昇している。ニューヨーク・タイムズ紙が5月に報じたように「過去1年間、低賃金労働者の賃金は最も速いペースで上昇している」。米国民は、このトランプ経済で生活が良くなっていると思っているだけでなく、実際に良くなっている。民主党が15日に行った討論会で経済が取り上げられなかったのも無理はない。
この展開は、ウォーレン氏にとってよくない。国民が経済は好調だと言っている時に、経済の「大構造改革」を呼び掛けて、誰が呼応するだろうか。ウォーレン氏が推進している構造改革に、何十兆㌦もの資金が必要となればなおさらだ。その上、ウォーレン氏は認めないかもしれないが、増税が必要になる可能性もある。
マンハッタン研究所の財政専門家ブライアン・リードル氏は最近、ウォーレン氏の提案に必要な費用をさらに積み増した。その数字は驚くべきものだ。「メディケア・フォー・オール(国民皆保険)」に10年間で30兆~40兆㌦、社会保障の拡充に2兆㌦、気候変動・環境政策に3兆㌦、大学の無償化と学生ローンの免除に2兆㌦、保育と住宅の無償化などの構想に追加の1兆㌦で、「合計38兆~48兆㌦」に上る。これには、ウォーレン氏が支持している不法移民に政府が無償で医療を提供するための費用は含まれていない。ウォーレン氏の富裕税などあり得ないし、中間層には大増税になる。
◇穏健派から追及
穏健派と呼ばれる候補者らが、討論会でウォーレン氏を激しく追及したのは当然だ。ウォーレン氏が民主党候補になれば、大変な事態になることを知っているからだ。2020年の大統領選で民主党が勝つには、トランプ氏は嫌いだが、トランプ氏の政策は支持するという有権者を奪う必要がある。有権者に、経済が好調だというのは間違いだといっても、社会主義を受け入れるべきだといっても、それはできない。トランプ氏を捨てても、好調な経済に変わりはないと有権者に確信させられなければ無理だ。
民主党がウォーレン氏を大統領候補に指名すれば、トランプ氏に疲れた有権者は行き場を失ってしまう。ウォーレン氏は8日、候補者に選ばれ、民主党が上院を取り戻せれば、「議事妨害を廃止」すると訴えており、そうなれば、過半数の賛成で、自身の過激な政策を通過させることが可能になる。つまり、トランプ氏の「私を好きだろうと嫌いだろうと、私に投票しなければならない」というメッセージが、まだ支持を決めていない有権者にとって真実味を帯びてくることになる。
(10月17日)






