サンダース陣営で労組の反乱
アメリカ保守論壇 M・ティーセン
賃上げ、保険料負担で合意
大統領選挙戦は不利に
バーニー・サンダース上院議員は今年に入って、大統領選挙戦の自らの陣営に歴史上初めて、労働組合を取り入れたと自慢気に発表した。そして、労働組合の反乱に遭う歴史上初めての大統領候補になった。
ワシントン・ポストによると、サンダース陣営の労組、全米食品商業労働組合(UFCW)ローカル400が、現場組織者らは「最低賃金」で働き、「現場スタッフらの多くは、ほとんど経済的にやっていけていない」と不満をぶつけた。組合によると、現場組織者は週に60時間働くため、時給13ドルで年収3万6000ドルを稼ぎ出す。サンダース氏が求めている連邦最低賃金、時給15ドルより大幅に低い。
さらに悪いことに、サンダース陣営が、この水準に給与の引き上げを申し出た時、組合は拒否していた。なぜだろうか。ポストによるとその理由は、「昇給されれば、現場スタッフの健康保険料も増える」ことだった。サンダース氏は、年収3万6000ドル以上のスタッフの健康保険料の85%しか支払っていないことが明らかになった。ところがサンダース氏は、「保険料なし、免責なし、患者負担なし、自己負担なし」の無料国民皆保険を選挙公約にしている。
サンダース氏はどのように対処したのだろう。まず、現場スタッフの労働時間を週60時間から43時間に減らした。こうすれば、陣営は、現場組織者の給与を実際には増額することなく、時給15ドルを支払っていると言うことができる。22日、最終的に譲歩し、給与を4万2000ドルに引き上げ、保険料全額を負担し、週の労働時間を50時間に制限することで合意した。
この議論の最中、サンダース陣営はその政策を擁護し、「他の陣営に匹敵する水準の賃金、手当を提供している」と強調した。マクドナルドの賃金は、他のファストフードチェーンに負けてはいないが、サンダース氏にとってはそれでも十分ではなかった。マクドナルドの従業員らと行進し、ウォルマートの株主総会に出席し、もっと労働者に配慮するよう求めた。なのに、自身の下で働く労働者には与えない待遇を、これらの企業には要求するというのはどういうことなのか。
組合は最終的に、賃金と健康保険に関する組合の要求をサンダース氏に受け入れさせた。しかし、それだけでいいのか。もっと想像力を働かせてもいいのではないだろうか。組合事務局が本当に、サンダース氏の掲げる水準を守ってほしいと思うなら、最低賃金15ドル、無料の健康保険は、そのごく一部に過ぎない。
サンダース氏は、処方薬の費用を負担し、「米国内の誰にも、必要としている薬に年200ドル以上は支払わせないようにする」と約束した。「すべての保育と保育園に入る前の子供」の費用を負担すると約束した。大学の無料化を約束した。「高収入の仕事の大部分が、取得するのに何万ドル、何十万ドルもの借金をしなければならない学位を必要としており、これでは本当の自由とは言えない」というのがその理由だ。「既存のすべての奨学金の返済を帳消しにし、米国民を途方もなく重い債務から解放する」と約束した。陣営の労働者にこれらすべてを提供し、手本を示してはどうだろうか。
もちろん、それはできない。実行すれば、陣営はすぐに破産してしまう。そこに難しさがある。サッチャー元英首相が「社会主義の問題点は、最終的に他人のお金を使い果たしてしまうことだ」と指摘したことはよく知られている。
選挙戦は他人の資金で運用される。必要最小限の活動で、スタッフらは低賃金で信じられないほど長時間、働き、支持者からの寄付金を使って候補者のメッセージを発信する。サンダース氏の場合、寄付金の大部分は、小口献金者からだ。サンダース氏の選出のために、苦労して手に入れた資金を手放す普通の米国民であり、政治活動家の社会福祉のために資金を出しているわけではない。
陣営が、スタッフのための高い賃金と手当に資金を費やせば、アイオワ州やニューハンプシャー州での選挙広告に投じる予算はなくなってしまう。広告を放送できなければ、サンダース氏は敗北し、スタッフ全員が職と手当を失い、快適なホワイトハウスでの仕事を手に入れるチャンスもなくなる。米国の公的資金を手中に収めることも、他人の資金を実際に使う機会もなくなる。従って、広告に使われるはずだったサンダース陣営の広告資金を、現場の労働者スタッフの賃金に振り向けてくれたこと、さらに、スタッフらが社会主義的なメッセージを拡散する時間を削減してくれたことを、UFCWローカル400に感謝しなければならない。米国に多大な奉仕をしたことになる。
(7月24日)






