民主の主張は証拠不足

アメリカ保守論壇 M・ティーセン

ウクライナへの圧力なし
トランプ氏の通話記録公表

マーク・ティーセン

 

 民主党が、トランプ大統領は「ロシアのために働いていた」と訴えていた時のことを思い出してほしい。最終的には、モラー特別検察官が「トランプ陣営の一員が、ロシアと共謀または協力して選挙に干渉したと立証することはできなかった」と発表して幕引きとなった。
 ウクライナのゼレンスキー大統領とトランプ氏との通話記録の要旨が公表された。ここでも、民主党の主張は証拠不足であることが明らかになった。

 この疑惑が明らかになった時、ワシントン・ポスト紙は、「2人の元米当局者」が「トランプ氏は外国要人とのやり取りの中で、問題ありと考えられる『約束』をし、米情報機関の1人の職員が正式に告発をするに至った」と語ったと報じた。だが、通話記録を見る限り、トランプ氏は約束をしていない。脅迫もしていない。そもそも不正の捜査の問題を持ち出したのはゼレンスキー氏であり、トランプ氏ではなかった。「国内の問題を解決したい。…どうすればいいか教えてほしい」とゼレンスキー氏はこの通話で言っている。

◇軍事援助を一時停止

 NBCのケイティ・ター氏は、通話記録の中でトランプ氏が「よかったら、バイデン副大統領の息子を調べてくれないか」と述べたと主張した。トランプ氏はそんなことは言っていない。トランプ氏がゼレンスキー氏に言った「よかったら」の部分は、バイデン氏の件とは無関係だ。通話記録によると、ゼレンスキー氏に、ジョン・ダーラム連邦検事が主導していたモラー氏の捜査情報の出所への司法省の公式な調査に協力してほしいと依頼している。司法省の報道官によると、ダーラム氏は「ウクライナなどの国々が、2016年の選挙時のトランプ陣営への情報機関の捜査にどの程度関わっていたかを調べていた」。

 内部告発者は、「(告発の中に)記した出来事のほとんどは直接、目撃していない」ことを認めており、トランプ氏がゼレンスキー氏に「個人的な興味から」この捜査への協力を求めたと説明している。ばかげている。いつから、米大統領が外国の要人に、司法省の公式な捜査への協力を求めることが不適切になったのだろう。

 通話記録からは、ウクライナへの軍事援助を一時的に停止したのは、欧州の同盟国が十分に責務を果たしていないことを懸念したからだというトランプ氏の主張も裏付けることができる。通話の中でトランプ氏は、「米国は欧州各国よりもずっとよくやっていて、欧州がもっとウクライナを支援すべきだ」と話している。それに対してゼレンスキー氏は、「確かにその通りだ。100%、いや1000%正しい」と答えた。さらにゼレンスキー氏は、ドイツのメルケル首相とフランスのマクロン大統領は、「ウクライナのためにもっと何かすべき」であり、「欧州連合(EU)は、ウクライナの強固な同盟国であるはずだが、現状は、米国がEUよりもはるかに強固な同盟国になっている」と述べている。告発者は、トランプ氏にそれ以外の動機があったかどうかは明確にしていない。

 バイデン氏についてはどうだろう。トランプ氏が、バイデン氏の息子を捜査するようウクライナ大統領に繰り返し圧力をかけたと報じられている。だが、トランプ氏がバイデン氏の名前を出したのは、通話の終わり頃だけだ。「もう一つ、バイデン氏の息子についていろいろ言われている。バイデン氏は起訴をやめさせた。それについて知りたがっている人はたくさんいる。この問題で司法長官と何らかの形で協力してくれればうれしい。バイデン氏は、起訴をやめさせたと自慢していた。これを捜査してくれれば…。ひどい話だ」

◇弾劾に突き進む民主

 もちろん、トランプ氏はこんなことを言うべきでなかった。しかし、この通話が示している事実は、トランプ氏が米国の支援を材料に、ゼレンスキー氏にバイデン氏の息子ハンター氏を捜査するよう圧力をかけたという非難とかけ離れている。国連でのトランプ氏との記者会見でゼレンスキー氏は、あの通話は「普通」で「誰にも圧力はかけられなかった」と述べた。

 告発者は、ホワイトハウス当局者がこの通話記録を「封じ込め」ようとしたことが、大統領の不正の証拠だと主張している。ひょっとすると、当局者らは、この証拠がリークされないようにしたかっただけなのかもしれない。近代の大統領の中で、トランプ氏ほど、外国の首脳との会話がリークされた大統領はいない。オーストラリアのターンブル首相、フィリピンのドゥテルテ大統領、英国のメイ首相、ロシアのプーチン大統領らだ。政権が、これらの通話記録の入手を制限するため対策を講じても不思議ではない。

 皮肉なことに、民主党が弾劾へと突き進んでいるおかげで、バイデン氏の息子の捜査も進むことになる。ただし、捜査を行うのはウクライナではなく、米議会だ。

(9月27日)