事実に基づく自由な捜査を

アメリカ保守論壇 M・ティーセン

豪への協力要請に民主反発
疑惑解明を求める国民

マーク・ティーセン

 

 反トランプ派は、トランプ大統領がオーストラリアの首相に、モラー特別検察官による捜査のきっかけをめぐる米司法省の捜査への協力を求め、バー司法長官が国外に出向いて、捜査に協力するよう外交・情報当局者らに要請したと非難している。ニューヨーク・タイムズ紙は、トランプ氏がまた「ハイレベルの外交を使って、個人的な政治利益を追求している」と指摘した。

 これは見当違いだ。このトランプ氏批判では二つのことが混同されている。トランプ氏の個人弁護士、ルドルフ・ジュリアーニ氏によるハンター・バイデン氏の事業への調査と、ジョン・ダーラム連邦検事による、2016年選挙戦中のトランプ陣営に対するスパイ活動の捜査への公的な捜査の二つだ。前者は、敵対相手への情報収集活動であり、後者は、刑事司法の問題だ。

◇ダーラム氏を起用

 外国の元首や情報当局者に、司法省の公式な捜査への協力を求めることは、悪いことでは決してない。ジョージ・ワシントン大学の法律学教授ジョナサン・ターレー氏は、「司法長官や大統領が外国の指導者に捜査への支援を要請することは異常なことではない。これによって官僚主義的な手続きを回避でき、特に、このケースのように、安全保障当局者や司法当局者が証拠を握っている場合は効果的だ」と指摘している。

 米国民は、ダーラム氏の捜査を支持している。反トランプ派は2年間、米国民に、トランプ氏が「ロシアのために働き」、「反逆」行為を働いており「その規模と範囲は恐らくウオーターゲートを超える」と言ってきた。重大な問題であり、国民はこれを深刻に捉えた。モラー氏が、トランプ氏は本当に国家に反逆したのかどうかの疑問に答えを出すのを待った。

 モラー氏は報告書を発表し、それらの嫌疑がどれも間違いだったことを明らかにした。国民が答えを求めたのは理解できる。トランプ-ロシア共謀疑惑を解明するために、政府機能は2年間にわたってまひし、何千万ドルもの税金が投入された。モラー氏の報告書が公表されたことを受けて実施されたハーバード大学アメリカ政治研究センター/ハリス世論調査で、米国民の53%が「FBI(連邦捜査局)内のトランプ氏への偏見が、捜査開始に一役買った」と考えていることが明らかになった。62%が、特別検察官を任命してトランプ氏への捜査について捜査することを支持した。

 バー氏は、特別検察官を任命せず、検察官のダーラム氏を起用し、国民が求めた捜査を行わせている。ダーラム氏は、オバマ政権時のホルダー司法長官の指名で、中央情報局(CIA)のテロリスト尋問の捜査を行っており、今回の捜査にはうってつけだ。CIAへの捜査は、誰も刑事責任を問われることなく終了し、ホルダー氏は、「休むことなく、完璧な捜査を行った」とダーラム氏をたたえた。

 バー氏は今、ダーラム氏に、あの時と同じようなプロ意識を持ってモラー氏の捜査の出発点を捜査するよう求めた。ところが、モラー氏の捜査で、どのようにしてトランプ氏がロシアと共謀していたかが明らかにされることを心待ちにしていた人々は、急に捜査への興味を失ってしまった。トランプ氏がモラー氏の捜査への信頼性を傷つけようとしたことに強く反発していた人々が今、ダーラム氏の捜査に対して全く同じことをしている。

 あの時、民主党は、トランプ氏が捜査への非難をやめ、「モラー氏に自由に真実を追求させる」よう求めた。民主党は自身の言っていることにもっと注意を払い、捜査に対する非難をやめ、ダーラム氏に自由に真実を追求させるべきだ。その結果、不正がないことが明らかになれば、それで解決だ。

◇政敵調査を正当化

 確かに、トランプ氏はウクライナ大統領との電話会談で、ダーラム氏の公的な捜査とジュリアーニ氏の党派的な活動の両方に言及しており、民主党に両者を混同させた責任の一端はトランプ氏にある。この二つの捜査を混同してはいけない。にもかかわらず、トランプ氏とジュリアーニ氏はその境界線をあいまいにしてしまった。

 しかし、忘れてはならないことがある。大統領候補が個人弁護士を雇って、政敵に関する捜査を外国に行わせることは不正でも違法でもないと言ったのは民主党だった。クリントン陣営と民主党全国委員会(DNC)がクリストファー・スティール氏に資金を提供し、トランプ氏のスキャンダルを集めさせたことが明らかになった時、民主党は、反対勢力への調査に過ぎないと主張し、正当化した。スティール文書の最大の問題は、民主党が反対勢力への調査に資金を出したことではなく、FBIがこの文書を基にトランプ陣営への情報収集を行ったことだ。ダーラム氏は、この点についても捜査している。

 ダーラム氏は党派を元に行動する人物ではない。政治的圧力はあったものの、オバマ政権時にCIAへの嫌疑を晴らした。モラー氏のように、事実に基づいて自由な捜査を行うはずだ。民主党が反発するのは、それが原因なのかもしれない。

(10月4日)