オンドルと豆炭あんか
10月になり朝夕は涼しくなったものの、昼間はとても秋とは思えない30度超えの暑さが続いていたが一昨日から急に気温が下がり、昨朝は晩秋のような肌寒さまで感じるようになった。朝夕が肌寒くなると、わが家に登場するのが電気敷毛布だ。韓国で長く過ごしたため、家族皆がオンドル(韓国式の床暖房)の部屋で寝ることに慣れてしまったためだ。
ソウル市内でも気温がマイナス10度くらいまで下がることはざらだったが、オンドルが利いた部屋で、窓を閉め切っていると半袖でも過ごせるくらい温かい。エアコンの暖房は、むしろ、つけない方がいい。空気がからっと涼しくて、気持ちいいからだ。最近はベッドで寝る人が増えているが、薄い敷布団と掛け布団で温かいオンドルの床に寝ることに慣れてしまうと、日本でいくら暖かそうな毛布を敷いても、それだけでは物足りなく感じてしまう。やっぱり、下から温かさが押し上げてくるような感触が欲しくなってしまうのだ。
筆者は東京より温暖な四国出身だが、幼い頃、冬になると畳部屋の寝床に入るのが本当に嫌だった。家業が忙しかったので、子供だけ先に寝させられることが多かったが、冷え切った空気の中の布団は敷布団も掛け布団も身が切れるほど冷たかった。「豆炭あんか」がある足の部分だけ除いて……。
豆炭あんかは、豆炭を燃料とするあんかだが、最初に使った時は、豆炭一つで一晩中温かく、足蹴(あしげ)にしても火事の心配がないので、とても便利だった。それまでのあんかは、半円筒屋根の犬小屋のような形の陶土器の中に炭火を置いた四角い土器を入れる形式で、子供心にも危なっかしく感じた。
オンドル部屋で寝る時に、決まって思い出すのが、凍てつくような布団の中にあった豆炭あんかの温かさだ。エアコンの利いた部屋でベッドで寝るのが普通の今の若者にはどちらの良さも分からないだろうが。
(武)