民主党の弾劾調査は不公正
アメリカ保守論壇 M・ティーセン
証言の公開を制限
共和党の支持得られず
民主党のアダム・シフ下院情報委員長が23日、警備が厳しく、入室が制限される議会の施設で国防総省職員の証言を行おうとしていたことを受けて、何十人もの共和党下院議員らが入室を求めた。民主党は、慣習違反だと怒りを表明。民主党のエリック・スウォルウェル下院議員は「やましいことがあるから、こんなことをするんだ。潔白なら、調査に協力するものだ。潔白なら、下院の規則に従うはずだ」と反発した。
真実を発見しようと公平な調査を行いたいのなら、前回の大統領弾劾で取られたあらゆる前例、適正手続きに反することはしない。
◇組織的に前例覆す
現在の党派色の強い調査とニクソン大統領の弾劾とを比較してみたい。アメリカン・エンタープライズ政策研究所(AEI)のロバート・ドア所長が指摘しているように、ニクソン調査は、超党派の協力の手本だった。下院司法委員会のピーター・ロディノ委員長(民主)が集めたスタッフらは一つにまとまっていた。その中には、ロディノ氏が特別検察官に任命した、ドア氏の父ジョン・ドア氏も含まれていた。
下院は全会一致で、調査を承認した。少数派は、共同の召喚権限を与えられた。ニクソン氏の弁護人は、証言に臨席することを許され、委員会に提出されたすべての文書、資料を入手でき、証人に反対尋問をすることが許され、自身が証人を呼ぶことも認められていた。最も重要なのは、ニクソン氏が不利になる資料だけを選び出して、リークしたり、公表したりすることがなかったことだ。
クリントン大統領の弾劾調査でも同様だった。ニュート・ギングリッチ元下院議長が、最近のインタビューで述べたように、共和党は「1973年にロディノ氏が使った規則を一つ残らず採用した」。しかし、現在、ロディノ氏の党は、73年に適用された公正と適正手続きをすべて、組織的に覆している。
ウィリアム・テイラー駐ウクライナ臨時代理大使の証言を見てみたい。テイラー氏は、「調査」を米国からの支援の条件にしたと主張した。
証言したのは、ワシントンの機密情報隔離施設(SCIF)でだった。政府の最も機密度の高い情報を保護するための施設だ。その中では携帯電話の使用は許されない。しかし、携帯電話で撮影したように見える証言の写真がメディアにリークされた。
しかし、テイラー氏の非難に反論する共和党員の質問に対する答えなどを含む証言の全文はSCIFに隔離されたままだ。トランプ氏の弁護人は、見ることを許されていない。証言の場に臨んで、証人に反対尋問することすら許されなかった。その上で民主党は、トランプ氏を中傷するような情報をリークする一方で、無実の証明につながる可能性のある情報の公開を制限し、反論する権利をトランプ氏から奪っている。
そればかりか民主党は、制度を乱用している。民主党は、ホワイトハウスが、ウクライナ大統領との電話会談の内容を、極秘情報を保管する特別なサーバーに移動させたのは不適切だとトランプ氏を非難した。しかし、民主党は全く同じことをし、弾劾の証言をSCIFで行った。機密施設を使って、極秘扱いでない情報へのアクセスを、国民ばかりか議会議員にまで制限することは不適切だ。偽善とはまさにこのことだ。
はっきりさせておこう。密室で公聴会を開くことは、適正手続きを経ていれば問題ない。しかし、秘密と公正は関連している。どちらかが欠ければ、不正となる。
◇露骨な政治的動機
民主党の調査は党派的であり、今後、いろいろな面で跳ね返ってくる。一つは、共和党員が、手順は不適切だったと国民に訴えることができる。民主党の側に真実があれば、透明性や適性手続きを恐れる必要はない。第2に、民主党の党派的行動によって、調査に協力しない口実をトランプ氏に与えてしまった。
ドワイト・アイゼンハワー大統領が1954年に陸軍―マッカーシー公聴会で協力を拒否した例がある。その結果、共和党がアイゼンハワー氏を支持しやすくなった。現在、共和党は、弾劾調査をめぐって分裂しているが、トランプ氏のシリア政策ほどではない。民主党は、公正な対応をしないことで、弾劾を即席チーム同士の試合にしてしまった。
これらの行動は、民主党が不真面目で、弾劾調査全体が露骨な政治的動機に基づいたものであることを示している。大統領を辞めさせるには、上院の圧倒的多数の承認が必要と憲法に定められていることを考えれば、一つの党が、他党の支持を受けずに他党の大統領をやめさせることは不可能だ。にもかかわらず民主党は、共和党の支持を勝ち取ろうとはせず、弾劾に反対する投票を困難にしようとすらしていない。これでは、米国民の支持を得ることも困難だ。
(10月25日)