恥ずべき米へのタリバン招待

アメリカ保守論壇 M・ティーセン

同時テロ犠牲者への侮辱
直前に会合キャンセル

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 2011年にオバマ大統領は、イラクから全米軍を撤収させ、過激派組織「イスラム国(IS)」の台頭を許したが、IS幹部らをキャンプデービッドに招いて米軍撤収プランについて交渉していたらどうなっていただろう。オバマ氏の米軍イラク撤収の判断は大変な間違いだったが、テロリストと同席し、記念写真を撮ろうとするほど愚かではなかった。だが、この愚かなことをトランプ大統領は実行しようとしていた。タリバンをキャンプデービッドに招き、会合を開こうとしていた。

 実行されれば、その映像は、イスラム世界全体で報じられていたことだろう。米当局者らがタリバン政権崩壊を計画した同じテーブルに、タリバン幹部らが着き、合意を受け入れる。その合意は、米国の降伏と捉えられたことだろう。ちょうど、9月11日の米同時多発テロ18周年の直前だった。タリバンにとってはプロパガンダの大勝利であり、米国の弱さを宣伝し、世界中のテロリストらを勢い付けることになっていたはずだ。

◇相手はテロリスト

 もっとよくないことがある。トランプ政権が交渉していたタリバン代表団には、「タリバン・ファイブ」と呼ばれる5人のタリバン幹部が加わっている。13年間、グアンタナモで拘束され、オバマ氏が脱走兵ボウ・バーグダール軍曹と引き換えに解放したタリバンの指揮官らだ。

 グアンタナモの軍の資料によると、その中の一人ファゼル・マズルームは、「タリバンの陸軍参謀長だった時に戦争犯罪を犯した可能性があるとして国連に指名手配され」、「アルカイダなど過激派組織のメンバーと作戦で協力していた」。ノルラ・ヌーリは、「戦争犯罪を犯した可能性があるとして国連に指名手配され」、「アルカイダのメンバーと協力していた」。アブドゥルハク・ワシクは、タリバンの情報副大臣であり、「その権限を使って、アルカイダを支援し、タリバンのメンバーの逃亡を助けた。…さらにアルカイダのメンバーが、タリバンの情報員に情報収集の方法を手ほどきできるよう手配し、アルカイダのメンバーをタリバン情報省に配属した」。ハイルラ・ハイルファは、「(ウサマ・ビンラディン、)タリバンの最高指導者ムハンマド・オマルと直接の関係があった」。ムハンマド・ナビ・オマリは、「タリバン高官」で、「ホーストのアルカイダ・タリバン(反有志連合軍事)組織の一員であり、米軍と有志連合軍への攻撃に関与し」、その攻撃の一つで2人の米国人が死亡した。

 米国人を殺害した殺人者であり、テロリストだ。オバマ氏がこれらの人物を解放したことには怒りを覚えるが、トランプ氏が、これらのテロ組織に措定された組織の幹部らがキャンプデービッドに入ることを認めたことには、それ以上の強い憤りを感じる。それは、同時テロの犠牲者と、アフガニスタンで戦い命を落とした米兵に対する侮辱だ。

 キャンプデービッドでの会合は、前夜にタリバンによる残虐な自爆攻撃によって米兵が殺害されたことから、中止された。攻撃後、トランブ氏は会合を中止し、「交渉で自身の立場を有利にするためにこれほど多くの人の命を奪う連中がいるだろうか」ツイートした。それこそ、テロリストだとトランプ氏に言いたい。

◇「死んだ」撤収交渉

 トランプ氏擁護者らは、金正恩氏との交渉や、イランのロウハニ大統領への会談の申し出と変わらないと主張する。確かにそうだ。だが、第一に金氏とロウハニ氏は国家の長だ。

 タリバン指導者らはテロリストであり、「アフガニスタン・イスラム首長国」の長だと自称している。その人物らをキャンプデービッドに迎えることは、その正当性を認めることになる。

 第二に、北朝鮮とイランの場合、トランプ氏は強い立場で臨んでいる。両国に厳しい制裁を科している。タリバンに対しては弱い立場から交渉している。トランプ氏はアフガンから出たがっている。タリバンはそれを知っている。和平合意が交わされても、それは米国の勝利にならない。タリバンの勝利だ。

 タリバンは、アルカイダと手を切り、アフガン内に隠れ家を再構築することを認めないことでトランプ政権と合意した。同時テロ前の1990年代にも同じ約束をしている。

 同時テロ後、タリバン指導者らは選択を迫られた。アルカイダと決別するか、政権を失うかだ。タリバンは、政権を失う方を選択した。タリバンがアルカイダと決別することは決してない。

 タリバン幹部らは米兵を殺害することで、トランプ氏の顔に泥を塗った。だが、それは裏目に出た。トランプ氏は、タリバンとの交渉は「死んだ」と言っている。そう望みたい。交渉が死んだことで、トランプ政権の最も恥ずべき失敗も葬り去られる。

(9月11日付)