独裁者に厳しいトランプ氏
アメリカ保守論壇 M・ティーセン
圧力と制裁弱めず
中露北首脳とは会談
トランプ大統領はアジア訪問中に1人でも、2人でもない、3人の独裁者に会った。北朝鮮に足を踏み入れた最初の米大統領になり、独裁者、金正恩氏との「素晴らしい友情」を誇った。ロシアのプーチン大統領と一緒にまたメディアに登場し、ロシアの選挙介入について冗談を言った。中国の習近平国家主席には、「この200年の中で極めて優れた指導者」と呼んだ。その上で、イランの指導者とは「無条件で」会うと言った。
バラク・オバマ氏が大統領として同じようなことを一つでもすれば、保守派の強い反発を招いたことだろう。ならばなぜ、トランプ氏には怒らないのだろうか。簡単だ。オバマ氏と違い、北朝鮮、ロシア、中国、イランに強硬な姿勢を取っているからだ。重要なのは、何を話したかではなく、何をしたかだ。
オバマ氏は、反米独裁者を受け入れただけでなく、現金を与え、外交で譲歩した。ハバナの球場でキューバの独裁者ラウル・カストロ氏と「ウェーブ」を楽しんだだけでなく、キューバ政権を承認し、制裁を緩和したが、見返りは何も得ていない。キューバは国民への抑圧を強めることで応えた。
◇イランが影響力拡大
オバマ氏は、イランへの制裁を緩和し、巨額の資金を与え、その資金は、中東全域でのテロとシーア派の影響力拡大に使われた。
オバマ氏が、2012年に当時のメドベージェフ・ロシア大統領に公開の場で、選挙後なら「もっと柔軟になれる」と話したことはよく知られている。メドベージェフ氏はこれに対して「ウラジーミル(・プーチン大統領)に伝える」と応じた。09年に、オバマ氏はポーランドとチェコとの迎撃ミサイル配備の合意を破棄した。これは、両国の防衛力を損ねるものであり、ロシアにとっては都合がいい。14年にプーチン氏がクリミアを併合しても、何もせず、見ているだけだった。
一方トランプ氏は、独裁者らに事実上、何も与えていない。北朝鮮については、金正恩氏に不相応な称賛を送ったが、制裁も資産凍結も解除せず、外交上の承認も与えていない。そればかりか、金氏周辺への制裁を強化し、制裁違反の北朝鮮の船舶を拿捕(だほ)した。
先月のプーチン氏との会談でトランプ氏は、ロシアの「フェイクニュース」は問題ないと不適切な冗談を言ったが、一方で、ウクライナへの大規模な兵器と支援の提供を承認し、ロシアの外交官を追放し、選挙干渉や条約違反などあらゆることに対して複数の新たな制裁を承認し、中距離核戦力(INF)全廃条約から離脱し、北大西洋条約機構(NATO)同盟国に防衛費を増額するよう求め、プーチン氏の盟友、シリアのアサド政権を、民間人に化学兵器を使用したとして、2度、爆撃した。プーチン氏との会談の前、トランプ氏は、ロシアの天然ガスのドイツへの輸出を増加させるパイプライン「ノルドストリーム2」の建設を阻止するため、新たな経済制裁を科すと発表した。
ロナルド・レーガンを除いて、これほどロシアに対して厳しく接した米大統領はいない。
◇中国製品に追加関税
中国に対しては、自身を「終身大統領」と宣言した習主席をたたえる一方で、中国が貿易合意を撤回すると、2500憶ドル相当の中国製品に25%の関税を課し、米国からの知的財産窃取を罰した。中国がすぐに合意しなければ、3000億ドルの中国製品に追加関税を課す用意があることを明確にした。
イランに関してはイランの指導者と会う意思のあることを表明する一方で、オバマ氏が交わした核合意から離脱し、厳しい制裁を科した。
米国務省によると、この制裁でイランの原油輸出は88%減少、歳入の40%が失われた。最高指導者ハメネイ師がトランプ氏との写真撮影を望めば、それは可能だ。しかし、それは米国が圧力を緩和することを意味しない。
強硬策とソフトなレトリックの組み合わせが成功するかどうかは分からない。しかし、トランプ氏の北朝鮮訪問を非難する民主党員らの大部分は、オバマ氏がハバナでウェーブをしていた時は沈黙していた。保守派の大部分は、トランプ氏が実質的に譲歩しない限り、金氏のような殺人鬼と個人的な外交をしていても、大目に見る。
(7月4日)






