民主党は憲法の最大の脅威
アメリカ保守論壇 M・ティーセン
最高裁判事の増員主張
選挙人団制度の廃止を要求
憲法秩序への最大の脅威となっているのは誰か。トランプ大統領ではない。
トランプ氏が大統領に就任して以来、民主党は、トランプ氏は政体を脅かす全体主義者だと訴えてきた。だが現在、憲法に戦いを挑んでいるのは民主党の方だ。民主党有力議員らは、2020年に大統領に選出されれば、選挙人団を廃止し、最高裁判事を増員してリベラル派判事を送り込むことを約束、ますます過激化する政策を支持しない国民を無視し、その政策を押し付けようとしている。
選挙人団が設けられたのは、「数の暴力」(ジェームズ・マディソン第4代大統領)から国民を守るためだ。各州は、人口に基づく選挙人と、人口に無関係の各州2人の上院議員を合わせた数に等しい票を投じることができる。それは、小さな州にも大統領選出で影響力を持たせ、大都市を持つ大きな州が人口の少ない地方を従わせることがないようにするためだ。
民主党が選挙人団を嫌う理由は明らかだ。民主党は大都市エリートの党になった。米中部の人口の少ない州での支持は減っている。2016年大統領選の投票結果を示した郡ごとの地図を見ると、ヒラリー・クリントン氏に投票した郡を通らなくても大陸を横断できる。クリントン氏が敗北したのは、かつては民主党支持だった中部地域の労働者階級がトランプ氏に乗り換えたためだ。
◇社会主義路線を追求
選挙人団があるために、民主党が大統領選に勝利したければ、これらの有権者の少なくとも一部を取り戻すしかない。しかし、選挙人団をなくせば、中部の小規模な「フライオーバー」州の有権者を切り捨てて、ニューヨークやカリフォルニアなどの大きな、人口の多い、リベラルな州の支持者だけに目を向けることができる。中道派の有権者を取り込むために公約を穏健化させる必要もなくなり、制約なく、自由に社会主義路線を追求できる。オハイオ、ミシガン、ウィスコンシン、ペンシルベニア州の有権者らが、「グリーン・ニューディール」、医療保険、エネルギー・輸送部門を政府が管理することに反対すれば、それは不運としか言いようがない。
選挙人団によって、政党が広い範囲の有権者にアピールするようになり、このような節度のない過激化を防止できるようになっている。これを廃止しようとする民主党員が増えているのはそのためだ。幸いにも、憲法の起草者らは、修正に圧倒的多数の賛成を必要とした。この点も、数の暴力の抑制に貢献している。
しかし、民主党にとって過激な政策への障害はもう一つあるが、この点に関してはうまく対処する術(すべ)がない。最高裁だ。選挙人団制度によるトランプ氏の勝利によって、2人の最高裁判事が承認され、保守派判事が多数派を占めている。民主党が最高裁でこのような窮地に立つようになったのは、民主党自身のせいでもある。民主党はブッシュ(子)政権の最後の年に最高裁判事の指名を承認しないと表明、これが前例となり、共和党がオバマ大統領が指名したメリック・ガーランド氏を承認しなかった。民主党は、連邦高裁判事承認での議事妨害を阻止し、それが前例となって、共和党は最高裁判事の承認で議事妨害を排除することができた。
◇数の暴力で躊躇なし
民主党は、あらゆるところで見込み違いをし、今は、また前例を破って、最高裁判事を増員しようとしている。過去150年間、最高裁判事は9人だ。ところが、民主党の大統領候補に名乗りを上げているエリザベス・ウォーレン、カマラ・ハリス、クリステン・ジリブランド、ピート・バティジーグ、ベト・オルーク氏らは皆、大統領になれば、左派の多数派を確保するために最高裁判事を増員することを検討すると述べている。前回、これを試みたのはフランクリン・ルーズベルト大統領だ。だが、自党の反対で断念した。当時民主党が多数派だった上院の司法委員会は、「この国でかつて試みられたことのない司法権の侵害」と宣言した。
現在では、民主党の大統領が同じことをしても、このような反対に遭うことはなさそうだ。しかし、民主党が大統領選で勝利し、上院で60議席を獲得しなければ判事増員には、もう一つの少数派保護策である議事妨害を排除する必要がある。民主党はそれも躊躇(ちゅうちょ)しないのではないかと私は思っている。
まとめると、民主党は、米国の連邦制度の根幹を組織的に揺るがそうとしているということだ。民主党は数の暴力を追及している。それが今後、米中部でどう受け止められるかを見守りたい。憲法を破壊しながら、同時に憲法を守ることはできない。
(3月22日)