オカシオコルテス氏は不誠実
アメリカ保守論壇 M・ティーセン
「大きな政府」主張し数字軽視
民主議員に甘いメディア
民主党のアレクサンドリア・オカシオコルテス下院議員が保守派だったら、誰もが、その無知ぶりを指摘したことだろう。記者らは、オカシオコルテス氏の教養のなさを白日の下にさらそうと、ひっかけの質問をぶつけるはずだ。NBCのバラエティー番組「サタデー・ナイト・ライブ(SNL)」で、その知性と適格性が嘲笑の的となり、こき下ろされていたことだろう。
ところが実際には、SNLで褒めそやされ、CBS「レイト・ショー」のホスト、スティーブン・コルバート氏に予算のことでいじられるどころか、一緒にアイスクリームを食べ、批判に対してどれだけ反撃したかという話で盛り上がっている。
社会主義者というのはなんと気楽なことか。
オカシオコルテス氏に資質がないと言っているわけではない。同氏は今週、「気候変動に対処しなければ、世界は12年で終わる」と断言した。「国防総省の会計処理のミス」の21兆㌦があれば、自身が提唱する「全国民に高齢者・障害者向け公的医療保険(メディケア)を」計画に必要な32兆㌦のほとんどを充当できると訴えた。
国防総省の金庫に21兆㌦の税金が使われずに眠っているかのような言い方だ。「昨年、軍の予算を7000億㌦増額した。軍は要求してもいないのに」と言った。分かっていないようなので言うが、国防予算は総額で7160億㌦だ。移民税関捜査局(ICE)は、3万4000床のベッドを毎日、埋めるよう要求され、その数は2009年以来増える一方だと主張したが、これは間違いだ。
ICEは、その数のベッドを用意しておくよう求められているだけであり、要求も増えていない。「失業率が低いのは、皆が仕事を二つ持っているからだ」と断言した。これは完全に間違っている。労働統計局によると、600万人から700万人が仕事を二つ持ち、1億4800万人は一つしか持っていない。
◇非難記事見当たらず
オカシオコルテス氏が無知だという理由を挙げたが、不誠実でもあるようだ。今週、コルバート氏に、連邦政府閉鎖のせいで、選挙区の社会福祉事業のための事務所をまだ開設できていないと言った。「新人議員としてできないことがたくさんある。選挙区事務所をきちんと開設できない。パソコンが届かない。選挙で選ばれたのに、仕事に取り掛かれない。…お金がない上に、職員は自宅待機している」。これは間違っている。昨年9月、議会は19年立法府予算案を通過させた。次年度のための議会の人件費や事務所費用はここから拠出される。オカシオコルテス氏はこれを知っている。自宅待機職員と違い、給与は支払われているからだ。ニューヨーク・タイムズ紙は、ほかのニューヨーク選出新人議員3人は何とか、選挙区に事務所を開設したと報じた。要するにオカシオコルテス氏は、全米メディアで注目を浴びることに時間を費やし、連邦議会に初めて送ってくれた有権者のことは後回しということだと言えば、いくらか納得がいく。
にもかかわらず、信用できず、悪質で愚かなオカシオコルテス氏を非難する記事は見当たらない。ブッシュ・ドクトリンを知っているかどうかを確かめようと、「ブッシュ・ドクトリンをどう思うか」と意地悪な質問をする記者はいない。どこにもいない。確かに、この点に関してファクトチェック(事実確認)は行われている。サイト「ポリティファクト」は、オカシオコルテス氏の失業率に関する主張を、6段階の評価中、最下位の「不正確なだけでなくばかげている」とした。「ピノキオ」の数でうその度合いを測るワシントン・ポスト紙のファクトチェッカーでは、数多くのピノキオを獲得している。これを受けてオカシオコルテス氏は、「論点のすり替えプラス偏見」の犠牲者と主張した。いい加減にしてほしい。CBSの「60ミニッツ」で、「道徳的であること」は「正確で、事実に基づくこと」よりも重要だと言った。「大きな政府」に支持していれば、事実はそれほど重要でなくなるようだ。
◇史上最大の増額提案
事実は重要だ。人類史上最大の予算増額の提案となれば、事実はいっそう重要だ。ウェブメディア「ボックス」は最近、オカシオコルテス氏の「全国民にメディケアを」、大学無料化、雇用保証、「グリーン・ニュー・ディール」全提案の費用を計算した。今後10年間で42・5兆㌦に達する。現在の国の債務の2倍以上だ。残念ながら、国防総省の会計ミスを正しても払えない額だ。
1年前までメキシコ料理レストランで働いていた人物が出馬し、10期務めた議員を追いやって、下院議員に選ばれた結果がこれだ。米国ならではの現象であり、オカシオコルテス氏が政治的能力を持っていることは疑いない。
だからといって、事実を知り、国民に仕えるという議員としての責任を果たさなくていいということにはならない。支持者のウーピー・ゴールドバーグ氏でさえ、ABCの「ザ・ビュー」で、「少し立ち止まって、この仕事について勉強したほうがいい」と言っている。
いいアドバイスだ。一度、無知と判断されれば、挽回するのは難しい。サラ・ペイリン氏やダン・クエール氏に聞いてみればいい。ただし、この2人は保守派だから、同じ基準では測れないが。
(1月25日)






